作家・一色さゆりさんがコロナ禍で“購入してよかった”ふたつのモノとは 失敗した買い物も

エンタメ 2021年7月19日掲載

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買い物下手

 2015年に「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビューした作家の一色さゆりさん。芸大出身でアートにも造詣の深い彼女の、コロナ禍の日常を彩るお買い物とは?

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 じつを言うと、私は「買い物上手」ならぬ「買い物下手」です。ステキなものを適切なタイミングで賢く買っている人を見ると、「すごいなー」と羨ましくなります。私の場合どんなにステキなものに出会っても、「本当にこれ私に必要なの? 今買わなくてよくない? もっと安いのあるんじゃ?」とブレーキをかけて、あとから後悔することが多いからです。逆に「なんでそんなの買っちゃったわけ」と思うような、よく分からないものを衝動買いしてぐちぐちと悩むケースも少なくありません。

 買い物はうまくいけばストレス発散になりますが、失敗すればストレスになるのだなと実感するこの頃です。

 そんな私ですが、1月に確定申告の準備をしながら、ある大きな変化に気がつきました。去年1年間は、出費が極端に減っていたのです。言うまでもなく、コロナの影響でした。家から出ないと、おのずとお金も使わなくなるんですね。私のような「買い物下手」な人間でさえそうなのだから、社会全体の変化はいかほどかと想像してしまいます。

 とはいえ、このエッセーは「うれしい買い物」がテーマなので、私が最近買ってうれしかったもの(しかも、幸いまだ後悔していないもの)をふたつ紹介します。

植物とマイカーにハマる…「うれしくなかった買い物」も

 ひとつ目は、植物です。おうち時間が増えてペットを飼ったものの、持て余す人が増えたという悲しいニュースを読みましたが、私は夫と植物を育てるようになりました。手のひらにのる小さな鉢のヒポエステス、アスパラガス、コーヒーの苗木。エバーグリーンやセントオーガスチンといった立派な観葉植物。梔子(くちなし)やハイビスカスをはじめとした季節の草花——。気がつけば1年で増えに増えたうえに各々すくすくと成長して、狭い我が家がジャングルのようになっています。朝起きると、まず植物の具合をチェックして水をやって話しかけて(!)、植物を中心にして日々ははじまります。うっかり倒して枝が折れたりすると自身が骨折でもしたように大騒ぎして、外泊すると水やりのことが気がかりで早く帰宅せねばとそわそわしています。「うれしい買い物」と言いつつ、ある意味では大変な買い物でもあったかもしれません。

 ふたつ目は、マイカーです。コロナ禍で移動時に人との接触を避けるために車を買う人も増えた、と車屋さんから聞きました。関西人のステレオタイプを踏襲してケチんぼである私は、とにかく低燃費が持ち味の赤い小型国産車を中古で買いました。以前の持ち主は大型犬でも飼っていたのか、車内には謎のひっかき傷がたくさんありますが、乗り心地は最高です。執筆に行きづまったら、海岸線やカフェまでの道のりを運転します。一人カーオーディオを大音量で聴きながら車に乗っている時間は、なによりも気分転換になっているので、今のところ買ったことは後悔していません。ほっ。

 最後に、逆に「うれしくなかった買い物」は、ただ乗るだけで運動不足が解消されるというマシンです。買った直後、偶然ラジオで「振動が脳に悪影響らしいよ」と聞いて以来、なんとなく恐ろしくて一度も乗っていません。とほほ。

一色さゆり(いっしき・さゆり)
1988年京都府生まれ。東京藝術大学卒業。2015年、第14回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。近著に『飛石を渡れば』等。