文在寅が菅首相をストーカーするのはなぜか 「北京五輪説」「米国圧力説」……やはり「監獄回避説」が有力

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自国の弱みは書かない韓国紙

――「日米南北の首脳会談」が今すぐ開かれることはなさそうですが……。

鈴置:ええ、バイデン大統領は訪日しませんし、金正恩(キム・ジョンウン)総書記もコロナで外国に出かける余裕はない。ただ、いつ日朝関係が動くかは分からない。可能性が低くとも、韓国とすればそれに備える必要があるのです。

――なぜ、「北朝鮮説」は少数説なのでしょうか?

鈴置:日本では日朝交渉が本格化する可能性は極めて低いと考えられているからです。韓国でも同様ですが、文在寅政権にすればブラックスワン――可能性は低いけれど、起こったら大惨事――なのです。

――では、韓国メディアで多数説にならないのはなぜでしょう?

鈴置:韓国紙とすれば、書きにくい部分もあると思います。「北朝鮮説」は韓国側の都合で日韓首脳会談を開くことを意味します。会談を開くかで外交的な駆け引きをしている時に、自分の弱みを日本に見せたくはないのです。

 ただ7月9日以降、青瓦台(大統領府)は「北朝鮮問題を打開するために日本との関係改善が必要である」と説明し始めました。

 中央日報の「葛藤を解くため日本に行こうとする文…『手ぶらで戻れば逆風』憂慮」(7月9日、韓国語版)を翻訳します。

・青瓦台高位関係者はこの日(7月9日)、中央日報に「行き詰った韓日関係をこのまま放置していては朝鮮半島問題をはじめとする重要な懸案を解決する動力を得るのは難しい」とし、「韓国政府としては任期がさほど残っていない文大統領が、五輪を契機にした韓日首脳会談を通じて問題を解決せねばならぬとの切迫感があるのは事実だ」と述べた。
・文大統領が残りの任期で最も重点を置いている分野は南北関係の改善である。ところが米国は朝鮮半島戦略の前提として事実上、韓日関係の復元を要求している。

日本も使う「天の声」

――「米国の圧力」は本当でしょうか?

鈴置:嘘くさい話です。「日本との関係を改善したら、対北援助など韓国のやりたいことをさせてやる」と米国に言われた、との説明です。

 しかし、そんな野放図な対北政策を米国が許すはずはない。もちろん、韓国に対し「日本との関係を復元せよ」と言っていますが、それは必要条件であって十分条件ではない。

 なお、韓国で「北朝鮮説」があまり語られないことも、日本での少数説の原因かと思います。日本メディアの韓国報道の多くは韓国紙の「写し」だからです。

――ではなぜ、そんな“嘘”を……。

鈴置:保守からも普通の人からも、左派からも「日本に膝を屈してまで首脳会談をしてもらう必要はない」との政権批判が広がっています。それを交わすために「米国からの要請である」と天の声を持ち出したのでしょう。

 日本の外務省だって5月5日、ロンドンで日韓外相会談を開いて批判されたら「米国の要請だった」と、怪しげな言い訳をしました。韓国でも「米国からのお達し」はまだ、効き目があるのです。

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