文在寅が菅首相をストーカーするのはなぜか 「北京五輪説」「米国圧力説」……やはり「監獄回避説」が有力

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「安倍のケーキは食べない」はずが……

――鈴置さんは「北朝鮮説」を唱えてきました。

鈴置:残りの任期中に南北首脳会談を実施して「朝鮮半島に平和をもたらした」と国民にアピール。引退後の監獄送りを避ける――という、この見方こそが韓国の動きを最も合理的に説明できるからです。「監獄回避説」と呼んでもいいと思います。

菅首相に粘着する文在寅 “蚊帳の中”にもぐりこみたい韓国、『左派政権駆除』に動く日米」で詳述していますが、今回は時系列に沿って説明します。図表「文在寅大統領と日韓首脳会談」をご覧下さい。

 文在寅大統領は日本には就任当初から居丈高に出て、例えば2018年5月に安倍晋三首相からケーキをプレゼントされた時も「食べなかった」と広報しました。日本とは妥協はしない、との姿勢を国民に示したのです。

 それが突然、日本との首脳会談を異様に望むようになったのです。2019年11月のASEAN関連会議では安倍首相に対しストーカーまがいの事件も起こしました。

 アポもないのに会議場で強引に引きとめて話し合いに持ち込み、挙句の果てに「会談写真」を撮って無断で公表しました。これに対し、日本政府は抗議しています。

「居丈高」から「ストーカー」への急変――。その間に起きた事件が2019年2月のハノイでの米朝首脳会談の物別れと、同年6月の米朝首脳による板門店接触への参加失敗でした。

 この2つの事件で「朝鮮半島の平和は文在寅大統領がもたらした」との幻想が一気に崩れたのです。政権としては致命傷でした。

 文在寅大統領としては手柄を積み直さねばならない。韓国の大統領はノーベル賞を貰うほどの実績がない限り、退任後は監獄送りになるのが通例だからです。

 そこで「平和の立役者」を演じる舞台を、米国から日本に切り替えたのです。それには日本の首相を操る必要があるわけです。

鼻先でドアを閉められた文在寅

――史上初の米朝首脳会談を演出した文在寅――はフェークだったのですね。

鈴置:今になってはすっかり化けの皮がはがれました。2017年夏ごろから、米朝の情報機関同士が首脳会談を模索し秘密接触を開始しました。これを嗅ぎつけた文在寅政権は大いに焦り、無理やり米朝の間に首を突っ込んで、韓国が仲介した形にしてもらった。

 米国がそれを許したのは、韓国のメンツを立ててやらないと邪魔するからです。北朝鮮は韓国からのカネを期待してのことと思います。

 米朝にとって韓国はもともと不要な存在。だから文在寅政権が熱望したにもかかわらず、シンガポールとハノイでの米朝首脳会談に呼びもしなかった。

 当時、米大統領の国家安全保障担当補佐官だったJ・ボルトン(John Bolton)氏が回顧録『The Room Where It Happened』(81ページ)で韓国排除の舞台裏を明かしています。

 その後に板門店で米朝首脳が接触した際も、文在寅大統領は無理やり加わろうとしましたが、米警護陣はその鼻先でドアをピシャリと閉めました。

 この映像を見た韓国人は「韓国こそが蚊帳の外」と思い知ったのです。それまでは自分たちが朝鮮半島を仕切っていると思い込んでいましたからね。

 2020年9月に菅政権が発足したことで、文在寅政権の焦りは一気に深まりました。菅政権は拉致問題の解決を目指し、就任早々に北朝鮮に水面下で交渉を呼びかけた模様です。それに対し、北も好意的に応じたように見えました(「韓国は『アグレマン』前に駐日大使を発表した 『北朝鮮一点買い』で延命図る文在寅」参照)。

 韓国は日朝関係が進展する際には首を突っ込んでおかないと大変なことになる。日朝が動く時は米朝も動きます。日米ともに文在寅政権は信用していませんから、韓国は朝鮮半島の将来を決める外交ゲームから外される可能性が高い。

 窮地に追い込まれた文在寅政権が画策したのが「菅懐柔」でした。「安倍前首相は応じなくとも、親韓派の二階俊博幹事長の後ろ盾が必要な菅新首相なら言うことを聞くはずだ」と踏んだのです。

 2020年11月10日、二階幹事長と親しい国家情報院の朴智元(パク・チウォン)が菅首相を表敬訪問し「東京五輪を舞台にした日米南北による首脳会議」を持ちかけました(「蚊帳の外から文在寅が菅首相に揉み手 バイデン登場で“不実外交”のツケを払うはめに」参照)。

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