ウイグル問題で次の標的は太陽光パネル ユニクロの二の舞になりかねない日本企業の実名

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「西側」から排除

 中国・新疆ウイグル自治区での人権問題をめぐり、ユニクロが米欧の制裁、司法措置の直撃を受けている。米国の税関当局が新疆綿を使ったユニクロTシャツの輸入を差し止めたほか、フランスでは、検察がユニクロの仏法人を含めた関連衣料品4社の捜査を始めたと報じられた。容疑は、「人道に対する罪を隠蔽したこと」だという。要は、中国が新疆ウイグル自治区で行っているウイグル人の強制労働による受益疑惑だ。大手紙経済記者が説明する。

「米国は、経済や先端技術で覇権を争う中国への格好の攻撃材料として、人権問題を取り上げ、より厳しく追及し始めました。これに、同じ危機感を持つ欧州連合(EU)諸国も同調しています。告発、制裁の対象はすでにウイグル産の綿花から、トマトなど農産物、さらにはウイグルで製造される太陽光発電パネル材料などに広がりつつある。今後は、“人権上の問題”が疑われる製品は、米欧を中心とした『西側』から、どんどん排除されていくことになるでしょう。日本政府は、こうした西側と中国との板挟みになっている日本の企業への影響は避けられないと警戒しています」

 米国のトランプ前政権は、中国のウイグル人弾圧を「ジェノサイド(集団虐殺)」と認定している。さらに、昨年末にはウイグルで国境警備と開拓を担う、中国の準軍事組織「新疆生産建設兵団」が、拘禁や拷問という手段を用いてウイグル人の強制労働や再教育を進めていると断定し、兵団が関わる綿製品の輸入を禁止した。1月に就任したバイデン米大統領も、対中強硬姿勢を引き継ぎ、新疆綿などを排除し始めている。

捜査主導は“対テロ部門”

 今回、輸入差し止めを受けたユニクロの運営会社ファーストリテイリングは、「製品に使っている新疆綿は新疆生産建設兵団と関係がない」と主張。米税関・国境警備局(CBP)に輸出許可を申請していたが、CBPに「可能性を排除できない」と却下された。

「仏調査報道機関メディアパルトによると、仏検察は6月末、ユニクロのほか、ZARAを展開するスペインのインディテックス、米靴大手のスケッチャーズ、仏SMCPの4社に対しても捜査を始めました。NGOの告発を受けた対応ですが、捜査を主導しているのは、検察の“対テロ部門”。仏検察が動いたのは、中国が最先端技術で国際社会をリードし、新型コロナではワクチン外交で途上国への影響力を強めていることから、安全保障、国際関係を踏まえての、いわば国策捜査だからです」(前出経済記者)

 米国とEUが「人権」で共闘し、対中圧力を強めることを確認し合ったのが、6月11~13日に英コーンウォールで開かれた主要7カ国首脳会議(G7)だ。外交関係者はこう指摘する。

「G7ではウイグル問題を念頭に、『国際サプライチェーン(供給網)における強制労働の根絶へ連携を強化する』という内容を首脳宣言に盛り込みました。これは、中国のウイグル人権問題に対する包囲網を築くと宣言したようなもの。今後、米欧は人権問題に絡んだ製品の排除に突き進むでしょう」

 そのため、これまでウイグル自治区で綿衣料の生産や調達を手掛けていた国際的な企業は、米欧と中国の双方から経済的な「踏み絵」を迫られることになる。スウェーデンの衣料大手ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)や米ナイキは、人権侵害に対する告発や禁輸といったリスクを避けるため、西側につく姿勢を見せて新疆綿の利用を中止した。同じように日本企業では、アパレルメーカー大手のワールドやグンゼ、ミズノが新疆綿の使用の取り止めを表明している。

 しかし、中国政府はウイグル強制労働問題をめぐり、「米国が誤った情報に基づき制裁している」と強弁し、中国国内のインターネット上では「新疆綿の利用中止企業」への不買運動が拡大している。その結果、例えばH&Mの2021年3~5月期決算では、中国向け販売が28%減の約16億クローナ(208億円)となったという。

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