ウイグル問題で次の標的は太陽光パネル ユニクロの二の舞になりかねない日本企業の実名

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無印は新疆綿の利用継続宣言

 逆に、海外売上高の半分近くを中国が占める「無印良品」の良品計画は、今年4月、

「(木綿の栽培過程について)第三者機関を現地に派遣し、昨年も監査を行っています。これまでの監査において、法令または弊社の行動規範に対する重大な違反は確認しておりません」

 と、事実上の新疆綿の利用継続宣言を出した。リスク管理に詳しい経営コンサルタントは、

「こうした姿勢は中国のネットユーザーから絶賛され、無印良品はH&Mのような不買運動を免れました。当然、米欧の告発、禁輸の対象となる恐れはありますが、それでも、中国市場にシフトして、実を取るという戦略を選ばざるを得なかったのでしょう」

 西側と中国の駆け引きは今後、綿花だけではなく、ウイグルで製造される太陽光発電パネルなどにも広がりを見せている。先述したG7首脳宣言では、人権上の問題取引が多い分野として、「農業、太陽光、衣料品」が挙げられた。そして次の焦点となるのは、太陽光発電パネルに使われる「ポリシリコン」だ。実際、米政府は6月下旬、ウイグルを拠点とする中国のポリシリコン製造大手を含めた5つの企業・団体が強制労働に関わった疑いがあると、これらの太陽光発電パネル部材などの輸入を禁止した。

「太陽光発電パネルや半導体素材に使われるポリシリコンは、ウイグルで世界の半分近くが生産されており、制裁が本格化すれば、日本の電機メーカーに及ぶ影響も甚大です。オーストラリアの安全保障シンクタンク『豪戦略政策研究所(ASPI)』が昨年3月に発表した報告書では、ユニクロ、無印良品のほか、ポリシリコンを念頭にウイグルの強制労働で受益している企業として日立製作所や三菱電機、ソニー、東芝などが名指しされていました」(前出経済記者)

「日本の立場は厳しい」

 大手電機メーカーはユニクロ同様、「直接の取引はないことを確認した」などと主張してきたが、原材料の調達先がウイグルか否か、再確認が必要になることは必至だ。もっとも、こんな楽観論もあるが……。

「米国の安全保障政策は突然変わることもありますし、気候変動対策で太陽光発電パネルの需要が増していますから、『ウイグル製』を排除すれば、米国のエネルギー企業からも不満が出るはずです。行き過ぎた政策として、どこかでブレーキがかかることも考えられます」(経済産業省幹部)

 とはいえ、ウイグル人権問題への対応を強めるG7のメンバー国では、未だに日本だけが中国の人権侵害に対する制裁に加わっておらず、ウイグル産品の排除に慎重な日本企業も少なくない。外務省関係者は、「米中摩擦、対立が水面下で激化している中、ウイグル製品や産品を排除する動きが落ち着くとは思えない。日本が置かれた立場は厳しい」と顔を曇らせている。

デイリー新潮取材班

2021年7月8日掲載

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