天皇陛下、菅総理の「内奏」で異例のご不満 背景に秋篠宮さまとの連携

国内 社会 週刊新潮 2021年7月8日号掲載

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 その「発言」は官邸を震撼させ、すぐさま世界中に飛び火した。米ワシントン・ポスト紙に躍ったのは〈東京五輪に日本の天皇から重大な不信任票〉なる見出し。“ご懸念”の背景には、官邸との確執だけでなく、秋篠宮さまや小室圭さんの影まで見え隠れしていた。

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 東京オリンピック開催を1カ月後に控えた折も折、宮内庁からもたらされた衝撃的な“発言”が、菅官邸を騒然とさせ、未だ余波は収まらない。事の発端は、6月24日に行われた宮内庁長官の定例会見。西村泰彦長官は次のように語った。

〈五輪を巡る情勢としまして、天皇陛下は現下の新型コロナウイルスの感染状況を大変心配されておられます。国民の間に不安の声があるなかで、オリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大に繋がらないかご懸念されている、ご心配であると拝察致します〉

 宮内庁担当記者によれば、

「西村長官は普段から淡々とした口調でお話しになります。“拝察”発言も言葉を溜めずにスッと仰った。長官がここまで踏み込んだ発言をされるとは思わず、しばらく重い沈黙が立ち込めましたが、まもなく堰を切ったようにこの発言に質問が集中したのです」

 ベテラン記者が投げかけた〈天皇陛下は五輪が感染拡大のきっかけになると懸念されているのか〉という問いに対し、長官は、

〈それは私の拝察です。日々、陛下とお話ししているなかで、私が肌感覚でそう感じている、と〉

 報道後の影響を考慮し、記者が〈このまま発信していいのか〉と尋ねても、

〈はい、“オン”と認識しています。感染防止対策を関係機関に徹底してもらいたいということとセットで〉

 あくまで〈陛下から直接そういうお言葉を聞いたことはありません〉としながらも、長官は、陛下が〈現状を非常に心配しておられます〉と明言したのである。

 名古屋大学大学院の河西秀哉准教授はこう語る。

「宮内庁長官が天皇陛下のことを“拝察している”と言えば、発言内容は実質的に陛下のご意思です。国論を二分するようなテーマについて、天皇陛下がご自身の見解を示されるのは異例中の異例と言えます」

 東京五輪・パラリンピックの名誉総裁を務められる陛下の“ご懸念”が、開催を1カ月後に控えた段階で表面化したことに、官邸も動揺を隠せない。

 政治部デスクが明かす。

「今回の発言は官邸にとっても寝耳に水でした。菅総理や加藤官房長官は“西村長官が個人の見解を述べたもの”と火消しに躍起ですが、長官が陛下のご心中を忖度(そんたく)して勝手に発言するとは考えられない。あの西村長官が官邸への根回しをしていなかったというのも信じ難いのですが……」

 西村長官の先々代に当たる風岡典之元長官は、五輪招致に皇族が政治利用されたのではないかと取り沙汰された際、「天皇皇后両陛下(現在の上皇ご夫妻)も案じられていると“拝察”した」と発言。さらに、上皇陛下が生前退位のご意向を表明された2016年にも、風岡元長官は「できるだけ優先的に対応して頂きたい」と述べて官邸の不興を買い、慣例の任期を前倒しして長官の任を解かれた。この“更迭劇”の後、宮内庁の事務方ナンバー2に当たる次長職に送り込まれたのが西村長官だった。

「警視総監を経て、内閣危機管理監を務めた西村さんは、緻密な根回しをすることで知られ、菅総理からの信頼も厚い。同じ警察官僚出身の先輩、杉田和博官房副長官も、西村さんを“(天皇陛下に)それはなりませんと言える”人物と評価していた。要するに、官邸としては宮内庁に“お目付け役”を置く感覚だった。にもかかわらず、今回に限っては、西村さんが官邸に事前通達したという明らかな情報は得られていません」(同)

 果たして、天皇陛下の“ご懸念”はなぜ表面化したのか――。その背景には、長官会見の直前に行われた陛下と総理との密室でのやり取りがあった。

「心配されているようだ」

 問題の長官会見の2日前、天皇陛下は皇居の宮殿で菅総理から「内奏」を受けられている。内奏とは天皇に対して主に総理が国政について報告する行為を指す。

 この日は、菅総理から4月の訪米や先月中旬に開催されたG7サミット、さらに、東京五輪に関する報告がなされた。実は、内奏を終えた菅総理は周囲にこう漏らした。

〈陛下はコロナの感染状況をかなり心配されているようだった〉

 社会部デスクはこう語る。

「これまでの内奏では、陛下は総理の報告を“聞き置く”に留められてきました。陛下の側から何かお尋ねになったり、報告の中身に踏み込んで感想を仰ることはまずありません。ただ、今回の内奏では、陛下が総理の報告にご不満を覚え、何がしかの見解を示されたように感じます。そうした陛下のご様子を察して西村長官も腹を決め、拝察発言に繋がったのではないか。もし、表立って官邸に事前通達していたら間違いなく発言を止められていたはずです」

 さらに、6月24日というタイミングについても、

「長官の定例会見は隔週の木曜日に開かれることとなっていますが、まだ五輪開催が決定的でなかった4~5月の段階で今回のような発言をすれば開催の是非を問うことに繋がりかねず、政治的な色合いが濃くなってしまう。また、7月に入ると目前に控えた五輪開催に水を差し、混乱を助長しかねません。加えて、五輪開催の可否や“無観客”が争点となっている都議選の告示は6月25日。その前日に当たる24日はまさにギリギリのタイミングだったと言えます」(同)

 本誌(「週刊新潮」)が渦中の西村長官を直撃すると、険しい表情を崩すことなく、

「何もお話しすることはありません」

 と言うのみだった。

 一方、天皇陛下が五輪開催による感染拡大を危惧なさるのには、もうひとつ理由がある。それは“開会宣言”の存在だ。1964年の東京五輪、72年の札幌五輪では昭和天皇が、98年の長野五輪では上皇陛下が開会宣言を読み上げられ、今回は、天皇陛下がその役割を務められることが検討されている。開会宣言の文言はオリンピック憲章に明記されており、今回の場合は以下のようになる。

〈わたしは、第32回近代オリンピアードを祝い、東京オリンピック競技大会の開会を宣言します〉

 先の河西氏が続けるには、

「五輪開催に強く反対する国民も少なくないなか、陛下は開会式で“祝う”と発言していいのかとお考えになり、ご自身が五輪開催にお墨付きを与えることへのご懸念もおありだったのでしょう。今回、ご意向を示されたことで、“陛下も内心ではご心配なさっている”と国民に伝わりました。政府に対しても、残り1カ月で国民が納得する形での調整を進めてもらいたいとお考えなのだと思います」

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