還暦目前のライターの「婚活アプリ」体験記 美女に言われた衝撃の一言、なりすまし詐欺も

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 出会いがないまま気づいたら中高年に――。そんな男女が増えているのでは。だが、このコロナ禍の不安からシングル族の「誰かと暮らしたい」という思いは強くなる一方のようだ。そこで意を決した59歳の独身ライターが婚活に挑戦した。果たして結果は如何に?

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「リモートワークがずっと続いて、まったく出会いがありません。このまま一人きりでどんどん歳を取ってしまうことを思うと怖くて、婚活アプリに登録しました。どなたか誠実な男性、メッセージをいただけますか」

「コロナで人と会わなくなり、孤独な夜を過ごしています。これからの人生を共有できる、たった一人の男の人と出会いたいです」

 婚活アプリを開くと、一人きりのさみしさを強くうったえるコメントが目立つ。新型コロナウイルスの感染拡大で、シングルの男女の婚活が活発になっている。

 ご存知のかたは多いと思うが、婚活アプリとは結婚を望むシングルのための、インターネットのアプリケーション。プロフィールや希望条件を入力して自分のアカウントを作ったら、検索機能を使い、効率よくパートナーを探すことができる。魅力を感じた相手にアプリ内で好意を伝える意思表示「いいね!」やメッセージを送り、相手が応じれば“マッチング成立”となり、メッセージを交換できる。その後は自由恋愛だ。

 掲載のグラフを見てほしい。「リクルートブライダル総研」(以下、ブライダル総研)による「新型コロナウイルス感染症流行による恋愛・結婚意向の変化」の調査結果だ。コロナ禍で最初の緊急事態宣言が発令された2020年3~5月、シングルの37・5%が「恋人がほしい意向が高まった」と回答している。そして、41・6%が「いずれは結婚したい意向が高まった」とも回答。つまり、シングルの男女の10人に4人が、結婚したいと考えるようになっている。

「誰かと暮らしたい」

「一生一人で暮らすことになりそうで不安」

 シングルの思いは強くなるばかりだ。

 ブライダル総研の調査では、いまやシングルの4人に1人は、結婚相談所、婚活パーティー、婚活アプリなどを体験しているという。

 かくいう筆者もさみしい一人暮らし。現在59歳。32歳で結婚。33歳で離婚。その後26年はずっとシングルで、まもなく還暦を迎えようとしている。容姿はお鉢が大きく手足が短い、農耕民族系の昭和人だ。

 生活は毎日単調。朝起きてすぐにパソコンで原稿を書き始め、一人で食事をして、また原稿を書き、夜は食事をしてまた原稿。

 最近はろくなものを食べていない。レトルトカレーやカップ麺ばかり。ビタミンは市販のサプリメントと青汁ドリンクで補給する。

 仕事の連絡はメールやLINEが主。だから、誰とも会話を交わさない日も多い。ちょっとしたシェルターにいる気分だ。

 就寝前の30分ほどが、いよいよ婚活タイム。「いいね!」を送った女性とマッチングが成立していないか。マッチングした女性からメッセージが届いていないか。童貞の中学生に戻ったように気持ちを高ぶらせ、パソコンで婚活アプリを開く。

10代から60代以上まで

 07年に就活を捩(もじ)って「婚活」という言葉が生まれるまで、婚活は周囲に知られないように行われていたと思う。男女の出会いは、学生時代の知り合い、社内恋愛、友だちの紹介が主流で、婚活は自力でパートナーを得られなかった“モテない男女”がしかたなく行うものだった。

 しかし、この10年でシングルの男女の意識は変わった。婚活ビジネスは成熟し、出会いのメインストリームの一つとして広く活用されている。もっとも大きな理由の一つは、スマホの普及だろう。19年の時点で個人保有率は67・6%(総務省調査)。21年では70%を超えているはずだ。スマホによって婚活アプリの利用が一気に広がり、20代、10代にまで婚活の意識が高まった。

 40歳、50歳、60歳……。人は概して、年齢の節目が近づくと結婚を意識する。このまま一人で40代を迎えるのか、50代を過ごすのか――と、あせる。

 筆者も40代の後半に猛烈に婚活を行った。婚活パーティーに通い、婚活アプリ(当時は「婚活サイト」と言っていた)も利用し、しかし成果が上がらずに50代に突入した。

 再び婚活に時間とエネルギーを注ぐようになったのは、頭にも鼻の穴にも下腹部にも白いものが目立つようになった50代後半だ。生涯一人か――。さみしさが日々の暮らしを高波のように襲い、20年代の婚活のメインストリーム、婚活アプリへの登録を決めた。まだコロナ禍前のことだ。

 そこからのジタバタした顛末をつづったのが先月20日発行の拙書『57歳で婚活したらすごかった』(新潮新書)である。

「60近くにもなって婚活アプリに登録するやつなんているのだろうか?」

 そんな不安が頭の中をよぎったが、すぐに杞憂に過ぎないことがわかった。今の婚活アプリで女性のプロフィールを閲覧すると、幅広い世代が利用していたのだ。

 そして、その規模や真剣さに驚かされた。かつて利用者は30代、40代がほとんどだったが、10代から60代以上までが婚活を行っている。当然登録者数は激増。1社で数万人。男性は女性、女性は男性のプロフィールを閲覧できるが、ほとんどの女性登録者が、自分の年齢や出身地、居住地はもちろん、職種、学歴、体形、希望する男性のタイプを明記。さらに、自身の顔写真までアップしている。

「友だちがアプリで知り合った男性と結婚したので、私も登録しました」

「アプリでパートナーと出会った会社の先輩に勧められました」

 そんな自己紹介文を見て、モチベーションが上がった。

 ところが、そんなに甘くはなかった。いきなり痛烈な洗礼を受けたのだ。

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