ステージ4を宣告された公務員の障害者が選んだ道 自分の営みを自撮りする映画が上映

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池田氏からの遺言はもう一つ

「障害」と「性行為」と「死」。濃厚なテーマだが、池田氏にも迷いはなかったという。

「こちらは単純な興味から出た言葉でしたが、イケダは近い将来、自分の命がどうなるのかが分かっていたのかなぁ……。いや、そうではなくて、イケダは確実に生きたいと思っていたし、2年足らずで死んでしまうつもりもなかったはずです。実際、余命いくばくかの病なら相模原市役所を退職して退職金をもらう選択肢もあったはずなのに、彼は“病気が治った後に働く場所がなくなると困る”と、あくまで休職を貫いていましたから。ただ、その一方で、自らの性行為を赤の他人に見せるというのは、ある意味、死を前提にした行為でした。池田は死んだら“無”になるという考えだったので、死んだ後はどうなってもいいと。いろんな意味で“やり逃げ”みたいなものなのかもしれないですね」

 亡くなった池田氏の遺言を守るべく、真野氏は膨大な映像の編集を佐々木氏に委ね、作品を完成させた。そして昨年12月には、知人や業界関係者を招いての上映会に漕ぎつけた。

「イケダの願いは“映画館での上映”。だから上映会で一応、約束は果たせたと思っていました。出来上がった作品に手ごたえはありましたが、まさか一般公開ができるとは思っていなかった。そのような中、アップリンクさんに声をかけていただき、イケダの名前を映画史に刻むことができたのです。もっとも予算はカツカツで、映倫の審査を受けることも出来ませんでしたが(笑)」

 実は、池田氏からの遺言はもう一つ。

「イケダは自分の家族に対して、どのような作品になっても、それが自分の意思だと伝えていたんです。作品が完成した後、ご家族に見せて許可を取ろうか迷ったこともありましたが、今回の作品は、僕と池田の関係でやっていること。万が一、ご家族にそのシーンはやめてくれと言われれば、作品を修正するのか。そんな葛藤を繰り返し、結局、ご家族には事前に見せずに作品を完成させる道を選んだ。公開当日には、イケダのお姉さんが映画館に足を運んでくださることになっています。もちろん、ビックリするシーンもあるとは思いますが、全体としてみれば、イケダの想いは伝わるんじゃないかと信じています」

 上映は6月25日(金)から2週間を予定しているという。

デイリー新潮取材班

2021年6月22日掲載

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