鉄道好きが愛す「地下鉄」 トンネルの真上には何が? 急カーブの意味は? 平坦区間がないのは?

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出現する急カーブの意味

 トンネルの真上が道路という原則をどれだけ地下鉄が忠実に守っているかが理解できる場所として挙げられるのは、ところどころで出現する急カーブである。急カーブの多い地下鉄として筆者が全国一と考えているのは東京メトロの日比谷線だ。北千住駅と中目黒駅との間の20.3kmを結ぶ日比谷線には半径200m未満と、地上のJR線や大手私鉄の線路ではなかなか見ることのできない急カーブが18回も出現する。もちろん、これらの急カーブは地上の道路に忠実に添って進むためだ。

 加えて日比谷線では設定されたルートの関係で交差点を右折または左折する場所も多い。交差点の下をほぼ直角に曲がる区間は人形町-茅場町間、築地-東銀座間、日比谷-霞ケ関間、神谷町-六本木間、六本木-広尾間、広尾-恵比寿間にそれぞれ1カ所ずつ、計6カ所ある。カーブがあまりにきつくなりすぎるため、道路から全く離れずにトンネルをつくることはさすがにできない。やむなく6カ所とも、民家やビル、公園の真下を通っていく。

 もう一つ、地下鉄のトンネルが何としても道路から離れまいと必死に訴えかけているかのような場所がある。それは、2本の線路が上下に二段に並べられた場所だ。東京メトロでは東西線の神楽坂駅、千代田線の西日暮里駅から根津駅までの間、有楽町線の麹町駅や銀座一丁目駅、都営地下鉄三田線の三田駅、横浜市営地下鉄ではブルーラインの関内駅、神戸市営地下鉄西神・山手(せいしん・やまて)線の三宮駅などが挙げられる。

 いま挙げた場所では地上の道路の幅が狭いために2本の線路を横に並べる事ができない。無理に並べると、道路に隣り合う用地を買収するなり、借りる必要が生じる。建設費を比べると、2本の線路を上下に置くほうが横に並べるよりもはるかに高いという。それでも用地を確保する費用と比較すれば安上がりだし、手間も少ない。

平坦区間が姿を消したワケ

 地下鉄のトンネルの大きな特徴として言えるのは、ほぼ確実に上り坂か下り坂となっていて、平坦な区間はまず存在しないという点だ。先ほど急カーブの多い地下鉄として取り上げた東京メトロ日比谷線でも、地下を走っている南千住駅と中目黒駅との間には平坦な区間は1カ所もない。

 その理由は、下り坂から上り坂へと切り替わる谷間の場所に置かれたポンプ室という設備からうかがえる。ポンプが汲み上げているのはトンネルからわき出した地下水だ。地下水を流すにはトンネルが平らでは都合が悪い。したがって、傾斜を設けておくこととし、地下鉄から平坦区間は姿を消したのだ。

 最後に地下鉄ならではのよく知られた疑問を紹介しよう。1970年代の終わりごろ、漫才師の春日三球・照代による「地下鉄の電車は一体どうやって入れたんでしょうねえ」というフレーズが一躍有名になった。筆者の記憶では、2人の漫才は「地下鉄の電車はトンネルをつくるまえに埋めておく」とか「駅の階段から入れる」という具合に進んでいったと思う。各地の地下鉄の事業者には「あの話は本当か」という問い合わせが相次ぎ、否定に躍起になったそうだ。

 実際のところ、地下鉄のトンネルに電車を入れる方法はあまり意外なものではない。多くの地下鉄では車庫だけは地上に設置しており、鉄道車両メーカーから車庫までは他の鉄道を経由するなり、トレーラーなりで運ばれ、クレーンで線路に載せれば作業は終わる。地上の鉄道と相互直通運転を行っている地下鉄に至ってはさらに簡単で、地上から電車が走ってきて地下鉄に乗り入れていく。

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