コロナ禍で鮮明になった「日本の没落」…経済学者が23年前に著書で鳴らした警鐘

国内 政治 2021年6月10日掲載

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 昨年9月、ネット・通信制高校の特別授業に登壇し、義務教育に触れた麻生太郎財務大臣の“放言”が、最近メディアに改めて取り上げられ、拍手喝さいを浴びているという。

「微分積分・因数分解とかやらされますけど、大人になって使ってる人なんていないですよ。それが必要かね?」

 これがネットで「そうだ、そうだ」とウケているのだそうだ。しかし、高度な数学を活用する経済理論を駆使する財政政策を司る財務大臣が、こんな発言をしてもいいものか。

コロナが鮮明化

 麻生発言を聞いて、こんな時代を予言した稀代の名著を思い出した。森嶋通夫の『なぜ日本は没落するか』(岩波書店、1999年)である。著者の森嶋は、「経済学の教育が不十分だと、社会現象を論理的に分析する能力を持たなくなる」として、オックスフォード大学の政治家育成コース“PPE”が政治学(politics)、哲学(philosophy)、経済学(economics)を同時に専攻させることを絶賛し、「日本で政界入りする人は、そこまでの経済学の力を持っていない」と述べ、日本は政治の貧困によって没落すると、同書で下記のように指摘していたからだ。

「政治が悪いから国民は無気力であり、国民が無気力だから政治は悪いままでおれるのだ。こういう状態は、今後50年近くは確実に続くであろう。そのことから私たちが引き出さねばならない結論は、残念ながら、日本の没落である」

 この予言から23年が経った2021年。政治の貧困によって、日本が明らかに没落への道をたどっていることを、新型コロナウイルスが鮮明化させている。緊急事態宣言が3度繰り返され、飲食店や各種小売店が次々と廃業・倒産に追い込まれている。にもかかわらず、ワクチンの接種は遅れに遅れ、コロナの流行が終息する見通しは一向に見えてこない。東京五輪の中止・再延期を求める世論は日増しに高まり、唯一の同盟国である米国でさえも、日本への渡航中止を自国民に勧告した。それでも政府は東京五輪開催に向け暴走を続けている。

 今こそ、経済学の世界的な泰斗(すごく偉い学者)の手による「予言の書」の真髄を理解し、彼が鳴らした警鐘に耳を傾けるべきではないか。

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