高齢社長の“認知症”に付け込んだ企業版「後妻業の男」たち 人事や株をめぐる骨肉の争いに「名古屋のもつ鍋王」も介入

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脳梗塞で長期入院

「小牧工業」は愛知県内における砕石業界で有数の企業だ。創業者の伊藤武男前社長が脳梗塞を発症すると長男が後を継いだのだが、社長の地位や会社の株などをめぐり、骨肉の争いが繰り広げられている。そしてそのウラでは、怪しげな男たちが蠢(うごめ)いているのである。

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 目下、伊藤前社長の面倒を見ている貿易商が明かすには、「一昨年(2018年)の9月の終わりに、30年来の友人である伊藤さんから“助けてほしい”“家族に殺される”との連絡を受け、自宅に駆け付けました。それ以来、伊藤さんは私の家に身を寄せているのです」

 その前年、伊藤前社長は脳梗塞を発症し、長期入院を余儀なくされた。その間に社長辞任の手続きを取られ、後釜には長男が就いたという。

「伊藤さんは地位確認請求訴訟を起こしました。しかし、長男は伊藤さんの認知障害を主張し、確かに伊藤さんが証言台でまごついてしまったこともあって、一審、二審ともに敗訴。また、長男に対し、会社の議事録などを改竄した文書偽造などで刑事告発にも踏み切ったものの、結局、不起訴処分に終わりました」

助太刀

 骨肉の争いが苛烈さを増す過程で、貿易商は、「名古屋のもつ鍋王」と呼ばれた山中誠氏に助太刀を求めている。山中氏は週刊新潮2020年9月10日号の「MONEY」欄でも取り上げた人物だ。

 山中氏は親族で所有する会社の株式に目を付け、伊藤前社長が過半数の株式を握って復権するよう画策したが、奏功せず。むしろ、さらなるトラブルを生んだだけだった。つまりは、伊藤前社長は脳梗塞を患ったことによる認知機能の低下に付け込まれ、カモにされただけではないのか。

 当の長男に訊くと、前社長が脳梗塞で倒れる前から社長交代については相談していたといい、

「ウソの記憶を吹き込まれ、父は私に会社を乗っ取られたなどと言い出した。貿易商は家族の対立を煽り、漁夫の利を得ようとしている」

 名古屋のもつ鍋王、山中氏とも法廷闘争中という。これら長男の弁が事実ならば、高齢資産家を誑(たぶら)かす、企業版「後妻業」と言えなくもない。獲物に近づいたのは、女ではなく、怪しげな男たちだったが……。

「週刊新潮」2020年11月12日号「MONEY」欄の有料版では、創業者と長男の間で起きている争いについて詳報する。

週刊新潮 2020年11月12日号掲載

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