「平和の少女像」など「あいちトリエンナーレ」で物議を醸した3作品が上陸 慰安婦合意はどこへ?

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名古屋ではそろい踏み

 3つ目の「遠近を抱えてPartII」では、昭和天皇の肖像をガスバーナーで燃やし、灰を足で踏みつぶすシーンを撮影した動画が展示された。この作品は、1986年に富山県立近代美術館主催の「86富山の美術」で展示された大浦信行の作品「遠近を抱えて」(4点組)の続編である。

「遠近を抱えて」は昭和天皇の写真と女性のヌード写真などを合成したコラージュ画で、この時も県議会で不快だと批判され、美術館は作品を売却するとともに図録を焼却処分している。作家や展示会主催者側らは、「昭和天皇の写真ではなく、昭和天皇がコラージュされた作家の作品を燃やした」、「初めに天皇の肖像を焼いたのは富山県議会と富山県立近代美術館だ」と主張している。

 東京での展示は「平和の少女像」に限られるようだが、名古屋市内のギャラリーで7月6日から予定されている〈私たちの『表現の不自由展・その後』〉では、問題の3作がそろい踏みするという。

 企画する市民団体はクラウドファンディングなどを通じて賛助費を募っており、そのページには、「平和の少女像」および世界に散らばる慰安婦像の作者であるキム夫婦の応援メッセージが掲載され、資金提供のリターンとして「重重~」作家とのオンラインミーティングに参加できるプランも用意されている。

歴史歪曲に対抗する試み

 最後に、2つの展示会について、韓国メディアの反応を見ておこう。

〈今回の展示は、表現の自由を脅かす現実に対する抵抗であり、日本の右翼勢力を中心とした歴史歪曲に対抗する試みとなる見込みだ〉(公共放送局KBS 2021.06.03)

〈韓日関係の特殊性のためか、日本軍「慰安婦」被害者に関連した展示は、日本国内で毎回のように右翼の標的になってきた〉(日刊紙「ハンギョレ」2021.06.04)

 韓国メディアは、日韓関係を悪化させている原因のひとつが日本の右翼陣営だと断じ、展示会が開催され、会期が全うされれば、そこへ圧力がかけられるという見立てもあってか、今回の件に好意的な反応を示しているようだ。

 さらに、ニュース専門テレビ局YTNでは、展示会を企画した市民団体代表のインタビュー動画も合わせて放送していた。そこでは、

〈日本はまだ慰安婦問題について謝罪していないということ。そして、日本は謝罪しなければならない責任があるということ。そうしてこそ、戦争責任を果たすことだという点を着実に継続して知らせていく。この展示もその一環である〉

 といった内容が確認できる。

 この手の「日本は謝罪していない」というのは韓国側のいつもの主張なのだが、事実ではない。

 2001年、小泉純一郎首相は、元慰安婦に向けた手紙でこう書いている。

「いわゆる従軍慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題でございました。私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます」

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