免疫力をアップする最強の「野菜スープ」 抗がん剤の世界的権威も推奨

ライフ 週刊新潮 2021年6月3日号掲載

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 方法はいたってシンプル。野菜スープを毎日食べるだけで「がん」から身を守れるというのだから、試してみない手はないだろう。「食」や「病」に関する著作も多いノンフィクション作家、奥野修司氏が長年の取材の末に辿りついた“最強”の健康法――。

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 私たちの体は食べたもので作られている。もちろん遺伝的な要素もあるが、半分は環境に左右される。悪い食べ物を食べれば病気になるし、逆に良いものを食べれば健康につながる。本来、50年前の日本人も現在の日本人も同じなのに、昔はなかった病気が増えているのは、主に食べ物が変わったからだろう。

 例えば、私たちが日常的に食べているものに野菜がある。野菜は嫌いという人でも、まったく食べない人はいないと思うが、ではなぜ野菜を食べるかといえば、人が生きていくのに必要な抗酸化物質を摂るためでもある。多くは人の体内で作れない種類のものだからだ。

 野菜に含まれる化学物質をファイトケミカルというが、その種類は1万種を超えていて、多くは抗酸化物質である。

 抗酸化物質とは、ビタミンAやビタミンC、ポリフェノール(大豆のイソフラボン、お茶のカテキンなど)やカロテノイド(β‐カロテンなど)といえば思い当たるだろう。動脈硬化予防やアンチエイジング対策のサプリメントもたくさん出ているが、こうした抗酸化物質を大量に含んでいるのが野菜である。

 抗酸化物質とは酸化に抗う物質、簡単にいえば猛毒の活性酸素を中和して消去してくれる物質のことだ。

 私たちは呼吸によって大気中の酸素を体に取り入れているが、その一部は必ず活性酸素になる。活性酸素というのは、酸化力を持った化合物で、触れた物質を錆びつかせてしまう。新型コロナの感染予防に使われている次亜塩素酸も活性酸素の一種だ。体内で活性酸素が発生するのは呼吸のせいだけではない。ストレスがかかっても活性酸素が増えるし、放射線が体を通過しても、紫外線に当たっても発生する。つまり、私たちは活性酸素から逃れられない運命なのだ。

 悪役のように見えるが、実は白血球の一種であるマクロファージなどは、体内に侵入してきたウイルスを殺すのに活性酸素を使う。

 この活性酸素の何が問題かというと、例えばDNAに触れて傷をつけたり、切断したりし、これを修復できなければがん細胞に変異していく。実際、活性酸素はがんの主要原因だと言われているほどだ。

 がんだけではない。老化や動脈硬化、脳血管障害、高血圧などにも関係しているといわれ、高齢化で問題になっている認知症との関係も指摘されている。老化がすすむとシミや斑点が増えてくるが、これも活性酸素が主要な原因だ。

 もちろん人間は、体内で発生した活性酸素を消去する物質を持っている。たとえばSOD(スーパーオキシド・ジスムターゼ)という酵素もその一つで、最近は美肌やアンチエイジングに効果があるといわれて注目されているが、それはともかく、強いストレスが加わったり、高齢化でSODが十分に作れなくなると、がんをはじめ、さまざまな病気になりやすくなる。歳をとると病気になりやすいというのはこういうことだ。

人間にとって薬

 こうしたことを教えてくれたのが、先日亡くなった抗がん剤の世界的権威でもある熊本大学の前田浩名誉教授だった。

 活性酸素を消去する物質が少なければ、外から補うしかない。というわけで、抗酸化物質を作れなくなった私たちは、野菜から摂るしかないのだ。

 ずいぶん前だが、人間はがんになるのに、どうして植物はがんにならないのだろうと思ったことがある。私たちは直射日光の下に長くいると皮膚がんになる。これは、強い紫外線によって細胞内に活性酸素が発生し、DNAを傷つけるからだ。でも、植物は芽が出てから枯れるまで強い日差しの下にいるのにがんにならない。これは大量の抗酸化物質で防いでいるからではないかと思ったのだ。

 植物は基本的に移動できないから、紫外線だけでなく、ウイルスや細菌、カビ、昆虫などに襲われても、逃げることができない。そこで、これらを撃退する武器であるさまざまなファイトケミカルを体内で作るようになったとも考えられる。なぜなら、同じ野菜でも、ハウス栽培の野菜よりも露地栽培の方に抗酸化物質が多く、大根のような根菜類では、根よりも紫外線にさらされる葉の方が50倍から100倍多く含まれていることからも想像できる。

 余談だが、同じ根菜類でもレンコン、サトイモ、サツマイモ、ジャガイモなどは切ると褐色に変色するが、これは抗酸化物質のポリフェノールが酸化するからだ。また、小豆、黒豆、大豆といった豆類も抗酸化力が強い。これは、子孫を残すために、種の中のDNAが酸素や紫外線で傷つけられないように抗酸化物質で守っているからだ。

 農薬や化学肥料を使って育てた野菜に比べ、自然栽培といって、農薬も化学肥料も使わず、土壌も耕さずに育てると、抗酸化成分が顕著に増えるそうである。害虫がつけば殺虫剤を使うなどしてぬるま湯的環境で育てると、抗酸化成分を作る必要がなくなるのかもしれない。

 こうしたファイトケミカルのほとんどは人間にとって薬になるといわれ、普段から野菜を大量に摂っていると、病気になりにくい体になるはずである。

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