面従腹背の文在寅 ソウルに戻ると即、金正恩に“詫び状” 米国でも始まった「嫌韓」

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2021年5月31日掲載

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 中国・北朝鮮側に大きく傾いていた韓国。5月21日の米韓首脳会談で、米国側に一気に引き戻された。しかし、ワシントンから帰国した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は直ちに北朝鮮に「詫び状」を書いた。韓国観察者の鈴置高史氏が展開を読む。

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コロナ理由に合同演習を拒否

鈴置:5月26日、文在寅大統領は「コロナのために、過去のように多くの兵力が(物理的に接触する)実戦形式での訓練は条件上、難しくないか」と述べました。8月に予定されている米韓合同軍事演習の実施に難色を示したのです。少なくとも「実戦形式の演習はしない」との意思表明です。

 与野5党代表との懇談会で述べたもので、発言は聯合ニュースの「文大統領『コロナで大規模な実戦形式での韓米演習は難しくないか』」(5月26日、韓国語版)から翻訳しました。

 文在寅大統領の発言は事実に基づかない詭弁です。5月21日、米韓首脳会談後の共同会見でJ・バイデン(Joe Biden)大統領が韓国軍の将兵全員に接種できるよう、55万人分のワクチンを供与すると発表しています。在韓米軍の軍人はほぼ全員が接種済みですから、実戦形式の演習によるコロナ感染の可能性は大きく減るのです。

 米韓合同演習は2018年6月の米朝首脳会談以降、規模が大幅に縮小されたうえ、机上演習に格下げされました。D・トランプ(Donald Trump)大統領の一方的な譲歩によります。

 そんな同盟は弱体化するほかありません。バイデン政権は文在寅政権に実戦形式の演習の復活を打診しましたが、「コロナ」を理由に拒否されました。そこで韓国の軍人へのワクチン供与を決めたと見られています。

「ワクチンは同盟の象徴」

――ワクチン供与の見返りに実戦演習を再開する、との合意があったのですか?

鈴置:報道されていません。しかし、一般にはそう理解されています。共同会見で以下のやり取りがあったからです。

 ホワイトハウスの発表資料によると、まず文在寅大統領が「韓米同盟のために、米国側が用意でき次第、韓国軍将兵にワクチンを供給するようバイデン大統領が決めてくれた」と述べました。

・for the sake of the ROK-U.S. alliance, President Biden decided to provide vaccines to the servicemen in Korea as soon as the U.S. is ready.

 続いて、バイデン大統領が「韓国軍と共にある在韓米軍の米軍人のためでもある」と答えたのです。

・we’re going - there are 550,000 Korean soldiers, sailors, airmen who work in close contact with American forces in Korea. We’ll provide full vaccinations for all 550,000 of those Korean forces engaging with American forces on a regular basis - both for their sake, as well as the sake of the American forces.

 ワクチン供与は同盟の象徴、と米韓首脳が語ったのです。このため「今年の米韓合同演習は実戦形式で実施するのだな」との認識が韓国では広がっていました。冒頭で紹介した文在寅発言がバイデン大統領との“約束”を踏みにじるものと受け止められたのも無理からぬ話です。

――実戦形式の演習をしないのなら、ワクチンも受け取らないつもりでしょうか?

鈴置:文在寅政権は食い逃げするつもりです。55万人分とはいえ、ワクチンを返上すれば国内から非難の声があがるのは確実。

 米国もワクチンを供与せざるを得ない。演習を実施するかどうか、韓国があいまいな態度を続ける限り、いざ実施の場合を考え米国は供給を拒否できません。8月の演習時にワクチンの効果を発揮するには、そろそろ韓国軍の兵士に打ち始める必要がありますし。

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