TBS「サンデーモーニング」原発処理水の報道で批判殺到 元担当大臣が指摘する問題点

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

Advertisement

専門家の出演

 汚染水を処理し、タンクに貯めると書けば簡単だが、現場では技術的な課題を1つ1つクリアしていく必要があった。処理技術も当初と今では性能が著しく向上しているが、これは技術者たちなどの尽力の結果だ。おまけに現場では作業員数人が労災事故で亡くなっている。人命が失われたことを想えば、間違った報道を是正しないわけにはいかなかった。

 細野議員は「原発の問題は専門的な知識が不可欠であり、番組にレギュラー出演しているコメンテーターにだけ見解を求めるのは問題がある」と指摘する。

 目加田教授が国際政治に、青木氏が公安警察についてコメントする場合は、専門家と言っていい。

 内閣の支持率や、殺人事件の社会に対する影響、はたまた芸能ニュースやスポーツについてコメントしても、問題となることは少ない。むしろ視聴者の共感を得られる場合もあるだろう。

「しかし原子力政策の場合は、知識のない人がコメントするのは、世論に与える悪影響が大きすぎます。『サンデーモーニング』に限らず、番組で取り上げ、コメントを視聴者に紹介する必要がある時は、原発の専門家にも出演を依頼すべきでしょう」

中韓への対処法

 細野議員は「何が何でも海洋放出に賛成しろ」と主張しているわけではない。地元の漁協が反対を訴えることについては「当然です」と理解を示す。

 あくまでも科学的に間違った見解が独り歩きすることを懸念し、ツイートを投稿した。その結果、世論の冷静さも実感することができたという。

「私のツイートも、ネット上では冷静に受け止めてもらったと思います。そもそも世論調査を見ると、多くの人が海洋放出に理解を示しています。反対を表明する場合でも、風評被害を懸念している方が少なくありません。何が何でも反対という人はごく少数だと思います」

 自分たちの原発が同じように処理水を海洋に放出していることもあり、欧米の論調も冷静だ。その一方で、中国と韓国が政府レベルで放出反対の論陣を張ったことは記憶に新しい。日本政府の対応を求める声もあるが、細野議員は「冷静になることが重要」と指摘する。

苦境をチャンスに

「韓国は処理水を海洋に放出しています。しかも日本よりトリチウムの濃度は高いのです。中国も核保有国ですから、専門的な知見は充分に持っています。その上で、両国とも意図的なキャンペーンを行っているわけです。この場合、日本は無駄なことは言わず、淡々と海洋放出を行うべきです。放出した処理水のデータを公表するなど、しっかりとしたエビデンスを示すことが何よりも国際世論には効果的でしょう。下手に中韓と協議を行ったりすると、向こうのペースに巻き込まれてしまいます。毅然とした態度が求められているのではないでしょうか」

 福島第一原発の廃炉にしても、細野議員は「決して悲観視はしていない」と言う。汚染水の処理現場を筆頭に、この10年でどれだけ技術が進歩したか、目の当たりにしてきたからだ。

「重要なのは苦境をチャンスとして捉える意思だと思います。福島第一原発の廃炉に向けた道のりが大変な状況なのは言うまでもありません。とはいえ、第一原発を新技術の実験場として捉え直すと、違った光景も見えてきます。高濃度に放射能汚染された場所で、無人で複雑な作業ができる技術が生まれれば、様々な分野にも転用が可能です」

デイリー新潮取材班

2021年5月16日掲載

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[5/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。