袴田事件、弁護団長「西嶋勝彦さん」の素顔 真犯人は「警察と利害が一致していた人物」

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時間稼ぎはさせない

 先の記者会見の翌20日、東京の「お茶の水合同法律事務所」で西嶋団長にうかがった。

「一年以上も味噌に浸かっていた衣服の血痕が赤いままなのか、という素朴な疑問です。検察はカラーネガが年月で変色したなどと言い訳し、実験しているかも明らかにしない。長期、味噌に漬けても赤みが残るという根拠を示せなければ検察は白旗となる。裁判所は検察に宿題を課しているのです」

「検察は一回目の三者協議で次回(6月)までに結論が出せないとし、メイラード反応(血液が酵素で黒くなるという)から反論したいようだが引き延ばしはさせない。海外の研究機関からの追加的資料も出してDNA鑑定を否定した高裁決定の間違いも明らかにしたい」

 弁護側の実験ではどんな素材でも一週間から一カ月で血痕は黒褐色に変化した。「これまで衣服が入っていた麻袋は使用していなかったが、麻袋に入れて実験したら黒ずむ変化が早まった。とはいえ、血の付いた服を味噌に漬ける実験などした学者はいない。無用な科学論争をしている時間はない。袴田巌さんは拘禁症なので、申立人の秀子さんに何かあったら終わってしまうのです」。

服を着替えながら殺人

 差し戻し審では色の問題だけに絞っているのではない。

「新証拠だけの評価ではなく、白鳥、財田川決定を頭に置いての新旧証拠の総合判断です。DNA鑑定などするまでもなく旧証拠をいくら集めても有罪になどならない。その脆弱性も裁判所に叩き込みたい。DNA、その支えとして味噌漬け。これで二本柱がそろった。最高裁の鼻を明かしてやります」と意気込む。

 味噌漬け実験のような素人実験を裁判所が認めるのかと弁護団は心配したが静岡地裁の村山(浩昭)裁判長は取り上げた。「しかし村山さんは控えめで決定的とは言わないんです」。

 筆者は特派員協会の会見で「村山さんの再審決定が明確に捜査側の捏造を言ったため、検察もそれだけは認められないと引くに引けなくなり長期化するのでは?」と質問した。

 小川秀世事務局長は「5点の衣類だけではなく捜査官の捏造がいっぱいある。捏造を避けては議論できない。最高裁も今回、捏造を正面から取り上げている」などと答えていた。

 「5点の衣類」や「とも布」(ズボンの裾上げで切った残りの布)が不自然な家宅捜索で袴田さんの実家から出てきた経緯を見れば捏造は明らか。ズボンよりもその下のステテコの方に血痕が広範に付着している。西嶋氏は「検察は『犯行の途中で着替えた』としか説明できない。人を殺している最中に着替えますか」と苦笑する。

 2014年3月の静岡地裁の再審開始決定は驚かなかったという。「審理の最終段階で村山裁判長は検察官が求めた立証を認めなかった。腹を決めたと思った。ただ釈放は意外でした。拘置所からいきなり巌さんが出てきて弁護団は面喰らい、秀子さんと2人のためスイートルーム二部屋を確保した。ホテルを手配していなかったので、テレビ局が確保した。弁護団で払うことにしたら20万円くらいでした。その後、心神喪失の鑑定書を書いてもらっていた東村山市の病院に巌さんを預かってもらった。テレビ局(テレビ朝日)は浜松から秀子さんと同行していて独占スクープでしたね」。

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