袴田事件、弁護団長「西嶋勝彦さん」の素顔 真犯人は「警察と利害が一致していた人物」

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 4月19日、有楽町の日本外国特派員協会で記者会見があった。登壇者は袴田秀子さん(88)、袴田事件弁護団の西嶋勝彦団長と小川秀世事務局長の3人。参加予定だった「死刑囚」袴田巌さん(85)は糖尿病の基礎疾患があり、コロナ禍での上京を断念した。巌さんは拘禁症で意味不明な発言が多いが秀子さんは「最近は少しまともなことも言うんですよ。裁判は必ず勝ちます」と朗らかに挨拶した。会場では浜松市で姉秀子さんと暮らす巌さんの日常の映像が流れた。

 司会役の映像ジャーナリストの神保哲生氏が事件と裁判の概略を英語で説明した後、マイクを持ったのが弁護団長の西嶋氏。「この事件は証拠の捏造ということで静岡地裁が画期的な判断を示している。事件から一年以上経って味噌漬けの5点の衣類が見つかった。捜査官の捏造が疑われる」などと優秀な女性通訳を通じて話し、外国人記者たちが熱心に聞き入った。

一審の終盤に突然見つかった5点の衣類

「5点の衣類」を簡単に説明する。1966年6月30日に静岡県清水市(現静岡市)の味噌会社の専務一家4人が殺された事件で、二カ月後に住み込み従業員の元ボクサー、袴田巌さん(当時30)が強盗殺人罪で逮捕・起訴される。当初警察が「犯行時の衣服」としたパジャマから被害者の血痕が出ず、裁判で検察は敗色濃厚だった。ところが静岡地裁での裁判の終盤に突然、「味噌樽から血の付いたシャツやズボンが見つかった」と、犯行時の服を下着を含めた5点の衣類に替えたのだ。事件から一年以上経っており、味噌樽に入れられたのが逮捕後と認定されれば有罪根拠は完全に崩れる。

 インチキ臭い経緯にもかかわらず最高裁で有罪が確定、袴田さんは死刑執行の恐怖に怯えて半世紀近く獄中に暮らす。しかし第二次再審請求を受けた静岡地裁は2014年3月、再審開始を決定し47年ぶりに釈放された。弁護団のDNA鑑定で被害者の血と一致しないとされた上、一年以上味噌漬けされた服の血が黒ずまずに赤いことへの疑問も呈された。しかし東京高裁は2018年、DNA鑑定の信用性を否定して決定を取り消す。弁護団の抗告で最高裁は昨年12月、「5点の衣服の血の色について審理を尽くすべき」として審理を高裁に差し戻し現在、裁判所、弁護団、検察の三者協議が続く。

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