実は高校野球より過酷…酷使される大学生投手の大きすぎる“問題点”

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 2年ぶりに行われた選抜高校野球で話題となったのが、「1週間500球」という球数制限だ。この規定に達して降板となるケースはなかったものの、畔柳亨丞(中京大中京)、達孝太(天理)というプロ注目のエースは制限投球数に近い球数を放り、準決勝ではともに先発を回避。リリーフで登板した畔柳は右肘の不調を訴えて2回1/3でマウンドを降りている。今後もこの制限については継続して議論される予定で、夏の甲子園についても「休養日」を1日増やすことが決定された。

 高校野球では、このように選手への負担を減らそうという試みがようやく実行に移されてきたが、その一方で“エースと心中”という起用がいまだに根強いのが大学野球である。

エースが全試合に登板

 一部と二部のチーム力の差が小さく、“戦国東都”と言われる東都大学野球では2003年春の入替戦で当時日本大のエースだった那須野巧(元横浜、ロッテ)が3試合全て完投。3日間で428球を投げて話題となった。また、関西学生野球でも07年秋には関西大の武内宏樹がリーグ戦12試合全てに先発ということもあった。

 10年以上昔の話と思われるかもしれないが、18年春には、東洋大の上茶谷大河(現DeNA)と亜細亜大の中村稔弥(現ロッテ)が、リーグ戦の最終節で3日連続先発のマウンドに上がっている。ちなみに、東洋大は優勝がかかった試合だったが、亜細亜大は優勝もなく、最下位に沈んで入替戦に回ることもない状況であり、それでも中村が3連投しているところに、1人の投手への“依存度”の高さが表れていると言えるだろう。

 そして、この春もこのような起用は続いている。駒沢大は5月6日終了時点で9試合を消化しているが、エースの福山優希が全試合に登板し、そのうち8試合が先発。また、亜細亜大の松本健吾は9試合中8試合に登板して、6試合で先発している。

 ここまで登板した回数は福山が56回1/3、松本が53回1/3。長丁場のプロ野球と、リーグ戦が約2ヵ月で終わる大学野球を単純比較できないが、5月6日終了時点でこれだけの回数を投げているプロの投手は1人もいない。

 東京六大学でも回数はそれほど多くないとはいえ、立教大の池田陽佑が4試合全ての先発マウンドに上がっている。高校野球では、よく力のある投手を複数揃えることが難しいと言われているが、大学野球の場合は決してそうではない。

 今回、取り上げた大学のこの春に登録されている投手の数を調べてみると、駒沢大は32人、亜細亜大は33人、立教大は26人となっており、甲子園出場経験がある選手も少なくない。これだけの投手がいながらも、エースに頼らないといけないというのは、選手の育成が上手く機能していないという証明とも言えるだろう。

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