実は高校野球より過酷…酷使される大学生投手の大きすぎる“問題点”

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投球数ガイドラインの運用がスタート

 しかし、そんな大学球界でも、新たな取り組みに着手しているリーグも確かに存在している。それが首都大学野球連盟だ。連盟として「医科学専門プロジェクトチーム」を発足させ、18年春のリーグ戦から、以下のような投球数ガイドラインの運用をスタートしている。

1、先発1戦目は投球数制限をしない。
2、2戦目は前日121球以上投げた場合は、翌日50球までとする。但し投球中に50球を超えた場合はイニング終了まで可とする
3、1戦目で120球以下の場合は連投を妨げない
4、雨天で1日あけた場合は、制限を設けない

 比較的、緩やかな規制ではあるが、少なくとも2日以上連続して1人の投手が完投するようなケースは確実に防げることは間違いない。ガイドラインの策定は18年春からであるが、先述した医科学専門プロジェクトチームでは12年秋からリーグ戦の投球数を調査しているという。

 これが好影響を与えたのか、近年、首都大学野球からは好投手が多く輩出されている。ドラフト1位でプロ入りした選手だけでも、菅野智之(東海大→12年巨人1位)、佐々木千隼(桜美林大→16年ロッテ1位)、松本航(日本体育大→18年西武1位)と3人にのぼる。

 さらに、今年のドラフトでも筑波大の佐藤隼輔、帝京大卒の広畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)が有力な1位候補とされる。1つのチームだけでなく、それぞれ別のチームからこれだけ1位の投手を輩出しているという点に、リーグとしての取り組みの成果がよく表れている。

 こういったガイドラインや球数制限を設けることは、酷使されるエースを守ることはもちろんだが、他の投手の登板機会が増え、全体のレベルアップに繋がる可能性が高い。指導者の意識を変えることにも繋がるはずである。高校野球だけでなく、アマチュア球界全体で、多くの選手が活躍できる環境が整えられていくことを望みたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年5月9日掲載

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