甲子園「球数制限」に不公平の声 日程次第で次戦が不利に

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 昨年から高校野球で“球数制限”が導入されている。昨年はコロナのため春は中止、夏は各校1戦のみの交流試合だったため、今年のセンバツが甲子園での実質初の運用となった。

 具体的には「1週間に500球以内」という制限、目的は投手の身体保護だ。

「医師、弁護士、監督らによる有識者会議で決まりました」

 とスポーツ紙記者が語る。

「上限とした“500球”については、かねて“まだ多い”という指摘があり、イニングではなく球数で制限することについては“打者がファールで粘るなど野球の質が変わる”といった批判が出てもいます。ですが、今回実際にやってみて、新たな問題が顕在化しました」

 それは“日程による不公平”と言うべきものだ。

 3月31日の準決勝に進んだ2投手を例に説明しよう。

 天理・達(たつ)孝太投手は準々決勝までの3試合で計459球、中京大中京・畔柳亨丞(くろやなぎきょうすけ)投手は計379球を投げていた。だが、達が大会2日目(20日)の1回戦で投げた161球は、1週間を経過した準決勝の時点では投球数に合算されない。一方、畔柳の初登板は大会6日目(25日)の1回戦最終日で1週間を経過していないため、準決勝で投げられるのは121球までとなった。

「結局、中京は準決勝で畔柳を先発させず、2番手投手を起用。大量失点を喰らい、途中から畔柳が登板するも後の祭りでした」

 中京大中京の1回戦が1日早ければ、あるいは途中でもう1日降雨による中止日でもあれば、結果は違ったかもしれない。それも含めて“クジ運”といえばそれまでだが。ちなみに達は、故障のため準決勝で登板せず、チームも敗退した。

 その点、決勝に進んだ東海大相模と明豊は、球数制限対策に抜かりなかった。

「東海大相模は、エースの石田隼都を1回戦では先発させず。明豊は3投手を代わる代わる投げさせる作戦を採りました」

 これからの甲子園は“球数制限”が勝敗の鍵を握る。

 そして、

「2006年夏に689球投げた斎藤佑樹(早実)、1998年夏に643球投げた松坂大輔(横浜)のような熱投が拝めなくなる」

 球児の健康は大事だが、少し寂しくもなる甲子園。

週刊新潮 2021年4月15日号掲載

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