「言われるがままに次々とハンコを」大阪の名刹「正圓寺」 悪名高き “事件屋”に乗っ取られ解体寸前

国内 社会 週刊新潮 2021年4月15日掲載

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残高証明書

 大阪市阿倍野区の聖天山(しょうてんやま)に建つ真言宗「正圓寺(しょうえんじ)」は、千年前、平安時代に開基された寺院。地元で「天下茶屋の聖天さん」と親しまれるナニワの名刹はいま、事件屋たちに乗っ取られ解体の危機にある。なぜそんな事態となったのか。

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 きっかけは、寺の敷地内に特養老人ホームを建設しようとしたことだという。正圓寺の15代目住職、辻見覚彦氏が経緯を明かした。

 2017年3月、施設運営のための社会福祉法人「天下茶屋聖天福祉会」が設立され、辻見住職が理事長に就く。市からは3億7120万円の補助金、福祉医療機構からも8億7120万円の融資が決まった。工事を請け負うのは地元のゼネコン“今西組”で、建築費は12億円也。

 だが、着工後まもなく資金繰りに窮する。補助金や融資が交付されるまでは銀行などからの“つなぎ融資”で工事を進めなければならないが……。

「どこの金融機関も融資に応じてくれませんでした。原因は、私自身が架空の“残高証明書”を大阪市の福祉局に出してしまったからです。福祉会の基本財産1億円には寺からの寄付金を充てるつもりでした。しかし、どうしても1億円が用意できず、寺の総代から借り入れました」(辻見住職)

 一旦、その1億円を福祉会の口座に入れて残高証明書を入手。総代にはすぐ返金したものの、不正は金融機関に広まっており、資金手当ては頓挫した。

「あとで元に戻したらエエ」

 その時期、金策を相談していた経営コンサルタントが不動産ブローカーを連れてきた。正圓寺の敷地の一部は阿倍野区に隣接する西成区に入り込んでいるのだが、ブローカーは、「今西組は寺とアンタの資産を差し押さえるつもりや」と言い立て、宅地開発しやすい西成が最初に狙われるからと、土地の名義を変更するよう畳みかけてくる。

 変更先はブローカーが実質支配下に置く会社だったが、「形だけやから。あとで元に戻したらエエ」と言われて応じたという。

「事あるごとに残高証明の不正で脅される一方で、言葉巧みに唆(そそのか)され、寺の資産を奪われていきました。遂には、不動産ブローカーが“わしの師匠”と称する事件屋の登場で、後戻りできないところまで追い詰められることになったのです」(辻見住職)

週刊新潮」2021年4月8日号「MONEY」欄の有料版では、辻見住職が追い詰められる過程と事件屋たちの人物像を詳報する。