文在寅のこじらせ愛 放射能五輪と名指しから一転、五輪不参加表明の北の説得に乗り出した

国際 韓国・北朝鮮

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片思いは変わらない

 そういった下心を見透かしているのか、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党宣伝扇動部副部長はここ最近も、相次いで文政権を非難している。

先月8日からは米韓合同訓練が始まり、同15日、金副部長は「自分たちが望まない一線を越える選択をした」と韓国を批判した。

17日には、対米外交の実務責任者として知られた北朝鮮外務省の崔善姫(チェ・ソンヒ)第1外務次官が、米朝対話の断絶を示唆。北朝鮮は21日に巡航ミサイルを発射し、25日には「新型戦術誘導弾」2発を発射する軍事挑発を行っている。

 このような振舞いにもかかわらず、文大統領の北朝鮮への片思いは変わらない。

25日午前に開かれた国家安全保障会議常任委員会で、北朝鮮のミサイル発射実験に深い憂慮を表明したが、文在寅大統領は翌26日の「西海守護の日」記念式典では一転、「南・北・米が会話を続けていく努力しなければならない」と口にしている。

 バイデン政権は、非核化を実現しない北朝鮮とは、対面する必要性も価値も感じていない。インド太平洋地域の中核である日米同盟に加えて、米韓同盟の強化も必要だ。

日米韓同盟を弱体化させて破壊

 3月18日にソウルで5年ぶりに開かれた米韓外交・国防長官会議(2プラス2)の共同声明には、北朝鮮の核と弾道ミサイルが「同盟の優先的関心事」で、半島と関連するすべての問題は「米韓間で完全に調整された対北戦略の下で扱われるべき」とあり、北朝鮮の完全な非核化と国連安保理が決議した制裁を履行する必要性が強調されている。

会話の必要性を強調する文大統領との隔たりは極めて大きい。

 韓国は東京五輪を「放射能五輪」と呼称して自国選手の出場に反対し、さらには五輪そのものを返上すべしというネガティブキャンペーンを展開。五輪選手村で福島産の放射能に汚染された食べ物が提供されるというデマまで流布させた。

東京五輪の中止を主張してきた韓国が、北朝鮮との関係回復に利用するため、反日姿勢を180度変えたわけだが、その狙いがもろくも崩れ去ろうとしている。

 南北の連絡事務所を爆破し、新型ミサイルや弾道ミサイルを撃ち、韓国の公務員を銃殺した北と対話する場を求め、独裁政権をなだめようとする文政権の態度は、愛をこじらせた印象がある。

 核武装国家・北朝鮮は、非核化なしには対話をしないという米国に、ICBM(大陸間弾道ミサイル)を向けている。文在寅政権は日米韓同盟を弱体化させて破壊し、北朝鮮独裁政権を保護する親衛部隊の役割を果たしていると言われても反論できないのではないか。

キム・サラン 1987年生まれ。韓国の大学院で言論学と国際政治学の修士号を取得。2013年からメディア企業に勤務。現在はフリーランスとして、日韓問題、韓国政治などについて執筆活動を行う。

デイリー新潮編集部編集

2021年4月12日掲載

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