地方移住で増えた意外な仕事 ニッチなエアポケットを見つける嗅覚の大切さ(中川淳一郎)

中川淳一郎 この連載はミスリードです 国内 社会 週刊新潮 2021年4月8日号掲載

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 2020年8月31日をもって「セミリタイア」をして佐賀県唐津市に引っ越しましたが、暇になるかと思ったらまったく暇にならない。この「セミリタイア」「地方引っ越し」という二つの要素を自分自身に加えたところ、この二つに関連した仕事がけっこうたくさん舞い込むようになったのです!

 編集者としての仕事はほぼ全部なくしたのですが、ライターとしての仕事や広報のコンサルっぽい仕事が増えています。元々は「ネットニュース編集者」や「広告・広報のことが分かる編集者」というポジションでしたが、これに加えて「セミリタイア界の若手」「地方住みますライター」という二つの新ポジションを獲得しました。4月からは佐賀新聞での連載も開始します。

 そんな中、先日唐津でお会いしたのが、地方創生を手掛けるポニーキャニオンのエリアアライアンス部の村多正俊さんです。佐賀県のPRアニメを作るなど、同社のコンテンツ制作力を活かした仕事をされています。

 競合は電通・博報堂・ADKといった大手広告会社に加え、凸版印刷など。「何がポニーキャニオン、そして村多さんの強みなんですか?」と聞いたら「エンタメ関連のコンテンツは全部ウチで制作する能力を持っています。競合他社は外注するので、仲介手数料がかかります。ウチは制作にお金をつぎ込めるのでクオリティが高いです」とスパッと回答いただきました。

 言うなれば村多さんは「エンタメの力で地方創生をする達人」という分かりやすい能力を持っているということでしょう。となれば、たとえば自治体の広報課長が「アニメとコラボしてドカーンと何かしたいね」「音楽イベントを何かやりたいね」などと考えた場合、村多さんのことが頭に浮かぶわけです。当然入札にはなりますが。

 ライターにしても「何でも書けます」「取材が好きです」ではダメで、「とにかくうどんに詳しいです」(井上こんさん)や、「『大人の常識』に詳しいです」(石原壮一郎さん)、「ドラマに詳しいです」(吉田潮さん)のような得意分野を持った人の方が強い。

 だからといって、「忍者に詳しいです」なんて言っても、次の大河ドラマの主人公が服部半蔵にでもならない限り、仕事をガッポガッポ獲得するのは苦しい。どこにエアポケットを見つけるか、という嗅覚が大事になります。

 とはいっても、ネットの場合、とんでもなくニッチな分野のやたらと詳しい情報を載せておくとアクセス数稼ぎができて、アフィリエイト収入を得られるかもしれません。

 私のブログは日々の雑記中心ですが、圧倒的にアクセス数が多いのがニンテンドー3DSのソフト「三國志」の攻略法です。13年発売のこの古いゲーム、まだやっている人が今でも常時千人程はいるのでは。1週間に500ほどのアクセスがあるんですよ。そして、皮膚の下にできるおできのような「粉瘤」の手術の体験記も、その手順やかかった費用、取り出した粉瘤の写真を掲載したら週300ほどアクセスされる。大した数ではないですが、見知らぬ誰かがこんなマイナーなネタを欲しているのだ、と考えるとやる気も出るものです。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。