本来なら9日だった日米首脳会談 1週間延期になったワケとは?

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アメリカ側の不手際に尽きる

 加藤勝信官房長官は4月2日の閣議後の記者会見で、日米首脳会談を16日に開催すると発表した。当初は9日で調整が進められていたはずだが、アメリカ側の事情で1週間延期となったという。はたして真相は?

 その事情を伝える報道によると、

〈加藤氏は延期の理由について「成功に万全を期すためだ。訪問中の行事、日程は調整している」と語った。政府高官は「米国で新型コロナウイルスの感染が拡大し、受け入れ態勢を準備するのに時間がかかる」と説明した。菅義偉首相は「4月前半」と表明していた〉(4月2日付日経新聞)

 とある。

 加藤氏は「9日でということは申し上げたことはない」と語ったが、この日程で進めていたことは、さまざまなメディアが、

〈日米両政府は菅義偉首相とバイデン米大統領の首脳会談を現地時間の4月9日にワシントンで開く調整に入った〉

 などと報じていた通り、明らかだ。

 では実際、何があったのか。

「アメリカでは日本と違ってワクチン接種が進んでいるし、いろんなことを見越した上でのスケジュール設定だったわけですから、政府高官の“受け入れ態勢を準備するのに時間がかかる”という言葉を鵜呑みにはできないですね。結論から言えば、日程を調整していたアメリカ側の不手際に尽きると思います」

 と、政治部デスク。順を追って説明してもらうと、

「実はアメリカのケリー大統領特使が4月8日までインドを訪問するのですが、その後に中国を訪問する流れが出ていました」

ホッとしている菅首相

 オバマ政権で国務長官を務めたケリー特使は、バイデン政権で新設された気候変動問題担当に任命されている。バイデン政権はトランプ前大統領と違って、同盟国と強く連携し、硬軟織り交ぜながら中国へプレッシャーをかける作戦を採る。

 人権や貿易で米中は激しく対立し、来年の北京五輪のボイコットをアメリカ側がチラつかせるなど交渉カードを遠慮なく切りつつあるわけだが、気候変動問題の分野では両国は手を携えるムードが漂っている。

「ケリー訪中となると、習近平国家主席とケリー特使が会談する可能性が出てきますよね。日米首脳会談とカブることになりかねず、大事な会談を同じ日に行うというのはアメリカならずともあり得ませんから、日程の再調整が必要になったのです」

 この間、調整を務めてきたのはカート・キャンベル氏。インド太平洋調整官の職にある64歳だという。

「意外かもしれませんが、ホワイトハウスは職員の数は限られており、雑用と言えるほどの本当に細かなことまで担務があります。加えて、国家安全保障問題を担当する大統領補佐官のジェイク・サリバン氏は44歳。キャンベル氏よりもポジションは上で20も歳が若い。そのあたりがお互いのコミュニケーションの妨げになっているのではと指摘する声もあります」

 特使と国家主席の会談と日米首脳会談が重なる可能性があると一言伝えておくか、伝えていたならさらに念押ししておけば済んだ話だったのかもしれない。

 他方、アメリカが対日より対中を優先させたのかという見方もできなくはないが、

「むしろ大統領特使として派遣されているケリーのことを第一に考えた結果でしょう。中国に余分に留め置くのは合理的ではありませんからね。バイデン大統領は菅さんの訪米にあたって、正副大統領との昼食会、食事会を設定し、国賓扱いではないものの、かなりの厚待遇で迎える準備をしています」

 国賓を迎えるホワイトハウスのそばにある迎賓施設に菅首相が宿泊するプランもあったが、副大統領公邸が改修中でハリス氏が住んでいるため、宿泊は断念することになったという。

「アメリカ大統領と最初に顔を合わせる国のトップであることには変わりはなく、体面を保てたという意味で菅さんはホッとしているようです」

デイリー新潮取材班

2021年4月8日掲載

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