総額表示義務化スタート、100円ショップに見る混乱 同じ商品にふたつの値段表記が

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「税別300円」「300円(税込330円)」の2種類の表記

 いわゆる「100円ショップ」では、売り場にこんな光景も見られた。同じ「ACアダプタ」の商品でありながら「税別300円」「300円(税込330円)」の2種類の表記の商品が並んでいるのである。違いは値段の表記だけなのだが、機能が何か違うのか、事情を知らない消費者は混乱しそうだ。

 なぜ、こうした現象が起きたのか。100円ショップの商品は基本的に100円であるため、100円商品のパッケージに価格は表記されていない。店舗の作業減のためプライスカードが使われていない店も多く、300円商品や500円商品など“100円ではない”商品にだけ、あらかじめパッケージに値段を表記する形をとっていた。

 つまり冒頭でご紹介したコンビニの傘同様、移行期間での対応が間に合わなかったわけだが、100円ショップの場合、300円商品や500円商品は売り場に点在している。コンビニの傘売場のように、すべての税抜き表示商品の近くにPOPを設け、注意を促すことは難しいのだ。

 この「ACアダプタ」を販売していたダイソーでは、レジ横や店内のいたるところに《当店では「税抜」「税込」表示の商品がございます》と以下の案内が掲示されていた。

《(1)値札、売価POPの無い雑貨商品…100円(税込110円)

(2)値札、売価POPの無い食品…100円(税込108円)

(3)値札があり税抜と書かれた雑貨商品
 …150円(税込165円)、200円(税込220円)、250円(税込275円)※以下略、1,000円(税込1,100円)までつづく。

(4)値札があり税抜と書かれた食品(軽減税率対象商品)
…200円(税込216円)、300円(税込324円)》

――もはやレジに商品を持っていくまで、いくら払えばいいのか分からない状況である。また一部にはこの掲示そのものがない店舗もあった。

 一方“300円ショップ”である「3COINS」の場合は、300円以外の商品のパッケージは、すべて総額表示になっていた。うまく移行できた形だ。

「天候要因もあったコンビニの傘とは状況が異なるわけですから、本当であればダイソーも、3COINSと同じように対応すべきでした。在庫管理の甘さは否めません。ただし、ダイソーと3COINSでは、ダイソーのほうが扱う商品の数が圧倒的に多い事情もあります。しかし、パッケージに総額を表示する商品は、今後、管理が大変になりそうですね。増税のたびに、いちいち切り替えなければならないわけですから。もしかすると、そうしたパッケージは減り、手間をかけてでもプライスカードを使う店が増えるかもしれません」

 コンビニの傘売り場しかり、ダイソーの店内しかり。総額表示義務化は、値札だけでなく日常の風景も変えたといえるだろうか。

デイリー新潮取材班

2021年4月6日掲載

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