総額表示義務化スタート、100円ショップに見る混乱 同じ商品にふたつの値段表記が

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 4月1日より、商品やサービスの表示価格を消費税額を含めたものとする「総額表示」の義務化がはじまった。消費者がひと目で価格を分かるようにするための措置だが、一部ではこんな混乱もあるようだ。

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 コンビニエンスストアの「傘」売り場に、これまでなかったPOPが掲示されているのにお気づきだろうか。商品の「税込み価格」を知らせるための表示である。

 コンビニが扱う商品の多くは、陳列棚に貼られたプライスカード(値札)で基本価格が表示されており、パッケージそのものには値段が表記されていない。プライスカードに税込み価格を記せば、総額表示の義務は果たせるわけである。

 ところが傘は例外で、包装パッケージに価格が表示されている場合が多い。一般商品と違い、いわゆる「傘スタンド」で陳列されるため、プライスカードが使いにくいのがその理由だ。そのため、4月1日からの「総額表示」に切り替えるのが間に合わず、現在も売り場に並ぶ傘のパッケージは「400円+税」といった表記のまま。別途、POPで表示する必要が生じているというわけだ。こうしたPOPは、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートの大手3社の店舗のいずれでも確認できた。

 総額表示義務化にあたっては「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」が施行され、2013年10月1日から今年3月31日までは“準備期間”とされていた。19年10月に現在の消費税10%になっていたから、商品の「総額」がいくらになるかは、前々から分かっていたわけだ。事業者にいきなり対応を求めたというわけではなく、コンビニの在庫管理が甘かったという見方もできるが……。

「コロナ禍で消費者の動きが変わったうえ、昨年の雨不足で、傘の在庫がはけなかった。そのため、各社とも現状はPOPで総額を表示する形をとっているようです」

 と解説するのは、流通アナリストの渡辺広明氏である。

「4月1日からは『1100円(税込)』や『1100円(税抜き価格1000円)』といった形の表記を求められるわけですが、一部のスーパーマーケットやディスカウントストアには『税抜き価格』の方を明らかに大きく表示し、総額表示を小さく見せているところがあります。消費者心理的には安くアピールしたほうが効果的なわけですが、この辺りは企業倫理の話になってきますから、難しいところです」

総額表示で「値上げ」のイメージが…

 総額表示をめぐっては、こんな動きも。ユニクロは総額表示義務化にあわせ、3月12日から値下げを行った。《1,990円+消費税=2,189円の商品は、消費税込みで1,990円に。3,990円+消費税=4,389円の商品は、消費税込みで3,990円になります。もちろん、商品自体はこれまでと変わりません。》(HPより)

 総額表示によって値上げしたイメージをもたれたくない、という意図があると目されるが「こうした対応が可能なのはユニクロのような体力のある企業だけです」と渡辺氏はいう。

「日本ではこれまで、1980円や2980円といった“端数”をつけた価格が好まれてきました。税抜きの価格をこうした端数にあわせて設定してきたメーカーが多いわけですが、総額表示によって、これが維持できなくなる。しかし、値上げした印象はもたれたくない。できるのであれば値下げを行い、ユニクロのような『税込1980円』『税込2980円』を打ち出したいが、そうもいかない。その結果、菓子などの加工食品を中心に、商品の容量や数量を減らして『税込み198円』などとする“シュリンクフレーション”が今後は進む可能性がありますね。消費者にとっては損な話です」

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