NHKドキュメンタリーで起きた重大事件 過労死記者の問題に蓋をするあり得ない体質

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NHKへの“批判”

「目撃!にっぽん」は、報道局に事務局を置く番組だ。その番組に報道局の「不祥事」について明らかにした人間の名前を出していいのか──NHKの関係者による、そんな懸念がきっかけではないか、というのだ。

 尾崎氏はクレジットが放送されなかった問題をどう受け止めているのか。取材を申し込むと、「事実が不正確に伝わるといけないので」と言って、面会に応じた。

「ある番組関係者によると、番組で使用するハードディスクを受け取るため、私が報道局へ行ったことが発端でした。その日私は、事務局のプロデューサーに会いました。するとその後、関係者は事務局と連絡が取れなくなったそうです。そして、『尾崎という名前を出さないでくれと(NHKが)言い出しかねない』と、私に語ったのです」

 尾崎氏は新聞記事で佐戸記者の過労死を知り、4年前に取材を始めた。

「私自身は佐戸さんとの接点はありません。しかしNHKで働いていたにもかかわらず、4年間も若い記者の死について知らされていなかったことにショックを受けました。噂話すら聞こえてこなかったのはおかしいと考え、佐戸さんのご両親、NHKの同僚、関係者への聞き取りを重ね、それを書籍にまとめたのです」

 尾崎氏は今でもNHKの仕事にやり甲斐を感じている。また、尾崎氏が執筆した書籍は、NHKをいたずらに非難するような内容ではない。

 なぜNHKは、それほど尾崎氏のことを警戒しているのだろうか。

選挙報道のリアル

 尾崎氏が言う。

「心当たりはあります。佐戸さんは都議選と参院選の取材が激務だったことで過労死しました。その勤務実態を調べていたところ、投票日の夜、各候補者の得票数について、佐戸記者以外のNHK記者の多くが、他社より早く情報を得ていたことを知りました。そして、『市長などと密接な関係を築き、開票作業の最新状況を教えてもらうことも珍しくない』との証言を書籍に記載しました。そのあたりのことをNHKの一部が問題視したのではないでしょうか」

 尾崎氏の著作『未和』では、NHKの記者が取材に応じ、選挙管理委員会が公式発表する前に、得票数を把握する方法を明かしている。つまり、こっそり市長に教えてもらうのだ。

《市長がね「今から独りごとを言うからな」って言うんですよ。「えー、何時何分現在、A(候補)何万何千何百何票。B(候補)何万何千何百何票……」(略)会社に連絡を入れます。もちろんそれは公式発表よりはるかに進んだ得票数で(略)正確です》(『未和 NHK記者はなぜ過労したのか』88ページ)

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