NHKドキュメンタリーで起きた重大事件 過労死記者の問題に蓋をするあり得ない体質

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リスク回避

 NHKが1秒でも早く当確を打とうとする姿がリアルに描かれている。記者と市長の関係は報道倫理に抵触するのではと思う向きもあるだろう。こうした記述をNHKが問題視したことは想像に難くない。

 書籍を上梓しようとしていることを把握したNHK側は、尾崎氏に内容などについて“事情聴取”を行った。

 そして、聞き取りの開始と歩調を合わせるかのように、NHK本体が尾崎氏に発注する番組の数は減少していった。

 そんな中、もし事情聴取を行った局員が、「尾崎孝史」のクレジットを見つけたら、問題になるかもしれない──。

「事情聴取を行った局員は『BSなら見ない可能性が高いのでクレジットを出す。ただし、報道局が管轄する「目撃!にっぽん」は地上波放送ということもあり、クレジットを隠す』、そんな判断があったのではないでしょうか」(前出の関係者)

 今年、NHKでは新人事制度が公表された。内部では「管理職をリストラする狙いがある」とも囁かれており、局員は「できるだけリスクのある案件は避けたい」と考えているという。

遺族の怒り

 尾崎氏は、NHKが佐戸さんの死についてきちんとけじめをつけていないことも、自身に降りかかった“クレジット外し騒動”も、問題の根っこは同じだとした上で、こう指摘する。

「佐戸記者のことを想い続けている職員は大勢います。残念なのは、彼らが伝えてくれる以下のような情報です」

《許せないのは、局内で佐戸の問題処理に関わった職員が漏れなく昇進していることです。いま局内で佐戸のことを自由に話せる空気はありません。同僚たちの中で、誰が上層部と通じているかわからないからです》──。

 未和さんの父、佐戸守さんは抑えた口調ながら、怒りを滲ませて言う。

「NHKの中にも未和のことをきちんと検証し、外に出して説明責任を果たすべきだという方がいらっしゃるんです。尾崎さんのことを見せしめにして、そういう声を封じ込めているようで辛いです。NHKは娘の死から何も学ばなかったと言わざるを得ません」

 母の恵美子さんは戸惑いを隠せない様子で、こう話す。

「スタッフの名前が、なぜ出なかったのかはわかりません。けれど、まるで消しゴムで消されるように“なかったこと”にされてしまったのではないでしょうか。これは娘の死を“なかったこと”にするのと変わりません。私たち遺族にNHKは寄り添ってくれるかもしれないと希望を持てた時期もありましたが、結果は違いました」

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