NHKドキュメンタリーで起きた重大事件 過労死記者の問題に蓋をするあり得ない体質

国内 社会 2021年4月6日掲載

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遺族の違和感

 13年に東京都議選と参院選の取材を担当した後、うっ血性心不全で死去した。僅か31歳の若さだった。

 発症2か月前の時間外労働時間は月188時間4分。発症1か月前は月209時間37分だったことが判明した。

 厚生労働省が過労死ラインと定めている時間外労働時間は月80時間。大幅に上回っていることは明らかであり、翌年に渋谷労働基準監督署が過労死と認定した。

 一方、彼女の遺族は、長女の死が貴重な教訓としてNHKで周知されているとばかり考えていた。

 そんな折、15年に大手広告代理店・電通の新入社員である高橋まつりさん(当時24歳)が過労自殺し、大きな社会問題となった。

 NHKも大きく報道したのだが、遺族はまるで“他人事”として伝える姿勢に、強い違和感を覚えたという。

 過労死問題のシンポジウムなどでNHKの記者や解説委員に接しても、佐戸未和さんが過労死したことを知らなかったという。遺族はNHKに抗議し、事実の公表を求めた。

組織防衛

 その後、NHKは「ニュースウォッチ9」(平日・21:00)で報じたが、放送時間はわずか2分16秒。その後も消極的な報道にとどまった。

 更にマスコミ各社からの取材にNHKは、「4年間、過労死を公表しなかったのは、遺族が非公表を希望したから」と説明した。これは事実と全く異なっていた。

 両親は会見を開き、NHKの虚偽を指摘。経緯を詳細に説明し、NHKにおける勤務管理の問題を改めて訴えた。

「NHKには全く弁解の余地がありませんでした。一方で、報道機関として、全国の過労死をストレートニュースとして報じ続ける責務があります。その度に佐戸さんの件を蒸し返されたら困ります。組織防衛という観点からは『1日も早く世間から忘れ去られてほしい』というのがNHKの本音でしょう」(同・関係者)

 果たして、クレジットが放送されなかったことと、佐戸記者の本を書いた尾崎氏の存在は関係があるのか。

「『長年、NHKで仕事をしている人間が、そのNHKに対して批判的な本を書いた。そんな人物を報道局が管轄する番組で使うと問題になりかねない』と判断した人がいても不思議ではありません」(同・関係者)

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