文在寅を「人権無視の人権派大統領」と認定したバイデン 国務省の報告書が凄すぎる

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食い逃げに怒る金正恩

――人権侵害を批判しなければ「対話が実現する」のですか?

鈴置:嘘です。金正恩(キム・ジョンウン)政権が韓国との対話に応じないのは、文在寅政権に騙されたからです。韓国の歴代左派政権は南北首脳会談を実施する見返りとして、何らかの形でドルを渡してきた。

 ところが文在寅政権は首脳会談を3回も開いてもらいながら、北朝鮮が満足するほどのお返しはしていないのです。米国がドル送金を厳しく監視しているためですが、北朝鮮にすれば「食い逃げ」されたわけです。北朝鮮が2020年6月16日に南北共同連絡事務所を爆破したのは「催促」も目的だったと思われます。

 韓国の左派政権は南北関係の改善を理由に正統性を主張してきました。文在寅政権の任期は2022年5月まで。北との関係が悪化したままだと退任後、どんな目に遭うか分からない。韓国の大統領はノーベル賞でも取らないと監獄に送られるのが普通ですからね。

 金正恩の顔色をうかがうのに必死となっている文在寅政権は、北の人権など非難できる状況からほど遠いのです。

 もっとも「北の人権問題に言及しにくい」理由として「退任後に監獄に行きたくないから」とは言えない。そこで「南北の対話や緊張緩和のため」と言い張っているわけです。さらには「対話しなければ非核化もできないではないか」との屁理屈もこねています。

――米国はそうした弁解は見抜いているのですね。

鈴置:すっかりお見通しです。VOA・韓国語版は3月20日、R・コーヘン(Roberta Cohen)元国務副次官補のインタビューを載せました。「人権抜きで核交渉に成功した前例はない…韓国、北朝鮮の非理を見逃すな」です。

 見出しを見れば分かりますが、「専制主義国家とは、核交渉するにも人権問題での攻勢が不可欠だ」との指摘です。ブリンケン長官の訪韓を受けて書かれた記事です。

 3月18日の米韓2+2(外務・防衛担当閣僚会議)の場でも韓国側が「非核化のためには対話が必要であり、北朝鮮の人権問題を批判すべきでない」と言ったのでしょう。そこで韓国政府がそうしたプロパガンダに乗り出す前に、米政府は韓国人に向け韓国語で反論したと思われます。

 なお、米韓2+2の後、日本人に対しても「韓国が人権問題に消極的なのは対話実現のためだ」との宣伝がネット上で始まっています。

韓国人の勘違い

――バイデン政権の人権攻勢を文在寅政権は予想していたのでしょうか?

鈴置:これほど強力とは考えていなかったようです。政府系紙、ハンギョレが政府機関、統一研究院のソ・ボヒョク研究委員にインタビューしています。「戦争無しに生きる権利も人権…北朝鮮の人権、平和権の側面からも見る必要あり」(3月22日、韓国語版)です。

 この記事も、北朝鮮の人権問題を批判しない文在寅政権を「歯切れ悪く」弁護したものです。ソ・ボヒョク研究委員は「価値外交、人権問題を掲げるバイデン政権に北朝鮮が反発しないか」との質問に以下のように答えています。

・年中繰り返される米国の人権への言及を韓国が拒否することは難しい。しかし、そうだからといって米国が同盟を無視してまで北朝鮮の人権問題を最上位に引き上げることはない。

 韓国人によくある勘違いです。「韓国は同盟国なのだから最後は米国は言うことを聞いてくれる」と彼らは信じ込んでいる。でも、それは同盟が正常に維持されている時の話。

 同盟の相手が二股外交に転じれば誠実な政権にとりかえるか、それが無理なら同盟を打ち切ろうと普通は考えるものです。現に米国は北朝鮮の人権問題への言及をやめないばかりか、韓国の人権問題まで言い出した。明らかに反米左翼政権の交代を狙っているのです。

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