文在寅を「人権無視の人権派大統領」と認定したバイデン 国務省の報告書が凄すぎる

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「三流国家に転落」と嘆く

――韓国人は極端に「外の目」を気にします。

鈴置:中央日報が象徴的でした。人権報告書を報じた記事の見出しは「表現の自由・ジェンダー・人種…世界が韓国人権乱打」(3月23日、日本語版)でした。韓国語版の見出しもまったく同じです。

 人権報告書を論じた社説の見出しは日本語版韓国語版ともに「大韓民国はどうして三流人権国家に転落したのか」(3月23日、)でした。

 「世界が乱打」「三流国家」――。韓国を世界が笑っている、と中央日報は嘆いた。韓国人は大きなショックを受けたのです。「世界で唯一、経済成長と民主化を独自に成し遂げ、最も優秀な民族として尊敬を集めている」との自画像を描いているからです。

 記事の書き込み欄には「我が国を見下す米国への憤懣」が寄せられる半面、「文在寅独裁は大韓民国の民主主義と人権を30年前に後退させた」といった政権批判も相次ぎました。米政府と韓国保守メディアの共闘は功を奏したのです。

「恥ずべき韓国政府」

――米政府は韓国保守の呼応を計算していたのでしょうか。

鈴置:緻密な計算があってのことと思います。ブリンケン長官の訪韓(3月17―18日)前後、VOA・韓国語版は「韓国政府が北朝鮮の人権問題を無視している」と繰り返し非難しました。

 3月15日、「米元官僚ら、『韓国は北朝鮮の人権弾圧にソッポ…歴史は覚えているだろう』」を載せました。国連の北朝鮮人権決議案の共同提案国に韓国が加わらないことを問題視したのです。

 元官僚ら米国のアジア専門家の談話を集めましたが、文在寅政権を徹底的に否定するものばかりでした。

 M・グリーン(Michael Green)CSIS上級副所長は「北朝鮮の人権問題に対する青瓦台(韓国大統領府)のやり方を、歴史は決して好意的には見ないだろう」と語っています。

 E・リビア(Evans Revere)元国務省首席次官補は「人権問題に対する韓国政府の立場には率直に失望し、恥ずかしさまで覚える」と、口を極めて非難しています。

 VOAは翌16日には「強い批判に直面する韓国の北朝鮮人権政策…『人権に沈黙、北朝鮮の攻勢の水位上げる』」を掲載しました。前文からして、韓国政府を威嚇するものでした。翻訳します。

・北朝鮮の人権問題に対する韓国政府の消極的な態度がワシントンで連日、まな板の上に上がっている。文在寅政権が南北対話と緊張緩和のために北朝鮮の人権侵害に声をあげないでいるが、こうした低姿勢がむしろ北朝鮮の要求と攻勢の水位を引き上げているとの批判が出ている。

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