コロナ禍で増加の脂肪肝、飲酒しない人も要注意 肝臓がんになるケースも

ライフ 週刊新潮 2021年3月18日号掲載

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「肝臓」の異変は顕在化しにくく、気付いたら病状が進行していることも珍しくない。“沈黙の臓器”と呼ばれる所以だが、とりわけ脂肪肝には要注意である。アルコール好きに特有の症状だと思ったら大間違い、飲酒と縁遠い暮らしでも、病魔が襲い掛かるリスクは十分あるのだ。

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 数ある肝臓の病気でも、脂肪肝と聞けば、反射的に“飲み過ぎ”といったフレーズが思い浮かぶことだろう。むろん、アルコール性の脂肪肝に罹る人が多いのは事実なのだが、

「お酒をあまり口にしない人が発症するタイプの脂肪肝についても、このところ多く見られるようになっています」

 そう話すのは、全国でも数少ない「脂肪肝専門外来」を開設する大阪府の市立吹田市民病院消化器内科の吉田雄一主任部長である。

「とくにコロナ禍では在宅勤務が増え、お菓子を食べ過ぎたり運動不足になったりしがちです。気がついたらお腹の周りに脂肪がつき、メタボリックシンドロームになっていたという人もいるでしょう。そうした人がなりやすい脂肪肝が最近、問題になっています。というのも、これを放置すると肝硬変、そして最悪の場合、肝臓がんに進んでしまうケースもあるからです」

 沈黙の臓器にあって、脂肪肝はまさしく“サイレントキラー”なのである。

 同院が脂肪肝専門外来をスタートさせたのは2017年。きっかけとなったのは、70代男性患者の治療経験だったという。

 その患者は糖尿病で入院しており、それまで飲酒の習慣はなく、肝臓の自覚症状も全くなし。ところがある時、検査によって肝臓がんが見つかったのである。

「手術の際、がん以外の組織を採って病理像を調べたところ、脂肪肝が原因となって肝硬変になっていたことが分かったのです。もともと日本糖尿病学会の報告でも、糖尿病の患者さんが肝臓がんで亡くなる割合は、糖尿病でない方と比べて多いことは分かっていました。そして、このケースをきっかけに、私たちは糖尿病と脂肪肝・肝臓がんとの関連性を調べ始めたのです」

 糖尿病で通院していた患者およそ500人を対象に5年にわたって調査したところ、肝炎ウイルスが関係しておらず脂肪肝から進行したと推定される新規の肝臓がんが5人に見つかったというのだ。

「脂肪肝由来の肝臓がんの背景に糖尿病があることが、これで裏付けられました。つまり、脂肪肝のリスク因子として最も気をつけなければならないのは糖尿病だということです。この70代男性もそうでしたが、糖尿病の患者さんは従来、血糖値の変化や心筋梗塞のリスクには備えているものの、消化器内科は受診しないため肝機能の衰えが見逃されていました。それは診療科が細分化されている医療体制の盲点だったといえます」

 その診療科の垣根を越えて連携を強化し、リスクが疑われる患者が近隣の医療機関を受診した際には引き受けるシステムを構築すべく、脂肪肝専門外来を開いたのだという。

組織が硬くなると…

 こうした知見をもとに、あらためて「脂肪肝」という症状を捉えると、

「端的に言えば、肝臓に脂肪がたまり、フォアグラのようになった状態です」

 吉田部長はそう指摘するのだが、ではいかなる仕組みで発症するのだろうか。

 たとえば飲酒が原因の場合、アルコールを分解する過程で、肝臓に中性脂肪を蓄積する作用が働く。飲み過ぎると、たまる脂肪の量も多くなるというわけだ。

 一方、酒をあまり飲まない人がなる脂肪肝は、糖尿病をはじめメタボリックシンドロームに関連していることが多い。つまり食べ過ぎ、肥満、運動不足であり、中でも問題なのが炭水化物の過剰摂取。炭水化物は分解されてブドウ糖となり、グリコーゲンとして肝臓に貯蔵される。が、運動不足で消費されずにいるとグリコーゲンは脂肪へと変わり、その状態が長く続くことで脂肪肝となってしまう。

 もちろん肥満も危険で、ウエストが男性85センチ以上、女性90センチ以上の場合は、胃腸など内臓の周囲に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」とされ、肝臓にも脂肪が多く蓄積されている可能性が高い。とはいえ、痩せ型の人も決して安心できない。皮下脂肪が少ないために内臓脂肪が目立たない“隠れ脂肪肝”のケースもあるからだ。

 ちなみに、アルコール性脂肪肝であるかどうかの判断は、酒量に換算して「1日あたりビール中ビン1本程度」が基準だという。というのも、

「純エタノール量に換算し、1日あたり男性は30グラム、女性は20グラムにとどめておけば、通常は肝障害を引き起こすおそれはありません」

 この数値は酒量に濃度、そしてアルコールの比重0・8を乗じて算出される。ビール中ビンが500ミリリットルで濃度5%だとすると、1本飲み干して20グラムのアルコールを摂取する計算だ。日本酒であればおよそ1合、ウイスキーはダブル1杯(60cc)、ワインはグラス2杯分といった量になる。日頃の飲酒量がこれを下回る場合は、脂肪肝が見つかっても「非アルコール性」と診断されることになるわけだ。そして、肝炎やアルコールではなく、このようなメタボに起因する脂肪肝に罹る人は、

「人間ドックを受ける人のおよそ30%が該当すると言われています」

 とのことで、現在、全国に患者は推定1千万人以上いるとされる。もっとも、こうしたメタボ由来の脂肪肝すべてが悪化していくわけではない。

「二つのタイプがあります。一つは、単に肝臓に脂肪がたまっていて、病気がほとんど進行しないと考えられる非アルコール性脂肪肝で、これを『NAFL(nonalcoholic fatty liver)』といいます。もう一つは生活習慣が改善されず、肝臓の細胞が何度もダメージを受けて炎症を起こし、修復を繰り返すうちに組織が硬くなっていく状態です」

 これが「線維化」で、

「線維化が進行している状態は『NASH(nonalcoholic steato-hepatitis)』と呼ばれ、肝硬変が起きつつある、または起きている状態ともいえます。メタボによる脂肪肝からNASHへと進む人の割合はおよそ1割弱とみられますが、悪化すれば肝硬変、さらには肝臓がんを引き起こしてしまうリスクがあります」

 恐ろしいのはがんだけではない。脂肪肝を放置すると、肝臓にためきれなくなったブドウ糖が血中に流れ込んで血管を傷つけ、動脈硬化を引き起こすケースもある。その結果、心筋梗塞や脳卒中、腎臓病を発症するリスクも2倍に上昇するという。また最近では、大腸がんのリスクを上げるという研究結果も出ているのだ。

 となれば重要なのは、早期発見に尽きる。

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