同級生との不倫がバレて… 主婦の妻を甘く見ていた夫が“思わず口にした本音”

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自分が知っている妻ではなかった

 義理堅くてしっかりした妻のいる家庭と、絵美子さんとの激しい恋。日常と非日常を行ったり来たりする生活にようやくなじんだころ、深夜の寝室で妻に突然、「みっともないマネをしないでね」と言われた。妻の顔は夜叉のようだった。

「な、なにとあたふたしながら聞き返すと、『京都で元同級生とアバンチュールですか。いい気なものよね』と。その前の週末、絵美子と京都で一泊したんですよ。週末だから仕事というのはおかしかったけど、絵美子が夫がいないから泊まれるというので、つい。京都で寄り添って歩いているところを誰かに見られて密告されたみたいです。そこから妻が調べ倒した。うっかり家のパソコンでホテルの予約をしたので、それも把握されていたみたいです。妻は機械音痴のはずだったんですが」

 妻が機械に疎いからパソコンなど調べられないだろうと思っている夫は多い。だがそんなことはない。スマホをいじるようになってから、女性たちはさまざまなアプリを駆使し、夫の浮気を見つけている。裕介さんの妻も、夫のパソコンと自分のスマホを一部連動させていたようだ。

「いくら夫婦だからといって、そこまですることはないだろ。オレにもきみにもプライバシーはある、とエラソーに言ってしまったんですよ。そうしたら妻は『開き直るのね』と。『プライバシーがあるからって、よその女と関係をもってもいいということにならないでしょ。それとも浮気を公認しろっていうこと?』とも言われました」

 自分が知っている妻ではなかったと裕介さんは言う。貞淑で夫に逆らわない妻、何より家族思いの妻。彼の認識はそこで止まっていた。だが妻は立ち止まってはいなかったのだ。結婚してからの20数年間、彼女は社会とともに生きてきた。専業主婦だから家族しか見ていないわけではない。子どもを通して、広い社会を妻たちは知っている。そして再度、社会に出て働き出しているのだから、「妻はしょせん、家族のことしか知らない。それでいい」と思っていた裕介さんの了見の狭さが感じられる。

「女性をバカにしていたわけじゃないんですよ。私は家庭を立派にマネジメントしてきた妻を尊敬していましたよ。だけど痛いところを突かれて、つい言ってしまったんですよね。『オレの稼ぎでこの家は成り立ってきたんだろう』って。言ってはいけないひと言だったけど、実は本音ですよ。私が汗水垂らして稼いできたお金で、家族は生活してきた。それをもうちょっと感謝してくれてもいいんじゃないかと思うわけ。それと浮気は別だけど、おかしいなと思ってもわざわざ調べなくたっていいじゃないですか。家庭を壊す気なんてないんだから」

 妻に開き直ってしまった自分を恥じてもいるようだが、本音をぶちまけて少し気が楽になったようにも見える。ただ、それは妻にはもちろん、子どもたちにも受け入れられなかった。すぐに謝ったが、妻は深いため息をついただけだ。

 以来、家族とはほとんど会話らしい会話がないままだ。それでも月に1度は、出張があろうとなかろうと彼は関西に向かう。絵美子さんには家庭の内情は話していない。

「今や私が私でいられるのは、絵美子との時間だけです。家族とは修復したいけれど、どうしたらいいか見当もつきません」

 会話がなくても日常生活は続いていく。週末、妻や子どもたちはほとんど家にいない。裕介さんは、息子が拾ってきた猫に慰められながら、週末の長い時間を過ごしている。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月17日掲載

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