元慰安婦は今度は国務長官に抱きつくのか 米国の怒りを報じない韓国メディアの歪曲報道

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韓国で「石破待望論」

――しかし、日本政府は韓国との対話に否定的です。

鈴置:今現在はそうです。菅義偉首相は当時、官房長官を務め、慰安婦合意の責任者でした。韓国の手口は十分に承知していますから、安易な対話には乗らない。

 しかし自民党の領袖の中には「日本は反省と謝罪が足りない」がキャッチフレーズの人もいます。2017年に石破茂元幹事長は東亜日報に「(日本は)韓国が納得するまで謝り続けるしかない」と語っています。

 同紙の「石破茂、『日本、韓国が納得するまで慰安婦を謝罪せねばおかしい』」(2017年5月23日、韓国語版)で発言を読めます。

 この発言が問題視されると、石破茂氏は「誤訳だ」と弁解しました。が、記事は訂正されることなく、今でも読めます。ですから2020年9月の安倍晋三首相の後継者選びの際には、韓国で「石破待望論」が語られたのです。

 菅義偉政権が長期化するとは限りません。韓国とすれば「対話に応じてくれる石破」の登場を待つ手があるのです。だから韓国政府はさまざまな経路を通じ、日本人に「隣国同士、仲良くすべきだ」「話し合いを拒否するとは大人げない」とささやき続けています。

「日本は対話せよ」と朝日新聞

――そんな宣伝に騙される日本人がいるのでしょうか。

鈴置:います。朝日新聞です。1月20日の社説「文大統領会見 解決へ実効的な行動を」で、「日本政府も、韓国の国際法違反だと突き放すだけではなく、謙虚な姿勢で対話に臨む姿勢が欠かせない」と主張しています。「歴史問題は未解決」と訴えたい韓国政府はこれを読んで「してやったり」と考えたでしょう。

――韓国は死にもの狂いですね。

鈴置:ブリンケン国務長官とL・オースティン(Lloyd Austin)国防長官が3月15日から17日まで日本を訪れ、日米外務・防衛担当閣僚協議(2+2)を行います。その後に訪韓し18日に米韓2+2を開く予定です。

 米韓の2+2は5年ぶりで、もちろんバイデン政権では初めて。中国包囲網を念頭に同盟強化を図る同政権が、この場で文在寅政権に態度表明を迫るだろうと韓国では緊張が高まっています。

 二股外交を続けてきた韓国に、ついに「真実の時」が来るのです。そこで「元慰安婦が国務長官に会いたがっている」などと言い出し、問題を蒸し返す作戦に出たわけです。
 
 国務省の会見を報じた聯合ニュース(英語版)の記事「Blinken’s trip to Asia wil provide ‘key ingredient’ for U.S. policy toward N. Korea: Price」(3月13日)からも文在寅政権の意図がうかがえます。

聯合ニュースは間接的ながら政府が資本を握っていて、報道姿勢も極めて親政府的です。

「日本を叱った」国務省

――報道官が言及した「慰安婦合意」に関し、どう報じたのですか?

鈴置:何と、「慰安婦合意」部分は一切、無視したのです。米国政府から「いつまで慰安婦でごねるのか」と叱られたことは書かなかった。

 その代わりに地の文で「米政府が『慰安婦は人権侵害だ』と認定している」「日本が徴用工判決の報復に半導体素材の対韓輸出を規制した」などと書き、国務省報道官が「日本を叱った」イメージの記事に仕立てあげたのです。

――他のメディアは「慰安婦合意」をどう書いたのですか?

鈴置:これまた驚くことに、ほとんどの韓国メディアが「2015年の慰安婦合意」に報道官が言及したことを無視したのです。私が見た中で触れたのはKBSだけでした。

 もっとも「米政府に叱られた」ではなく、「国務省が韓日の新たな生産的合意を希望した。米国が日韓関係の調整に乗り出す可能性が高まった」と報じたのです。「米国務省、『2015年の慰安婦合意』…言及の本心は?」(3月13日、韓国語版)です。

 明らかな歪曲報道です。プライス報道官は「新たな慰安婦合意」とは一言も言っていない。しかし、KBSはそう言ったことにして「米国が未解決の問題の仲裁に乗り出しそうだ」と報じた。

 文在寅政権の願望そのままです。KBSは聯合ニュースと同様に政府の傘下にあり、韓国では「政権べったりのテレビ局」と見なされています。

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