中国「ウイグル人根絶計画」に沈黙の日本、国会の動きは 法整備が進めば中国に対する入国拒否、資産凍結が可能に

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 中国による“ウイグル弾圧”は国際社会の重大事案だが、日本政府はさほど問題視するふうもない。そうした中、ウイグル人への弾圧を描いた漫画本が、異例の売れ行きを記録している。

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 1月に発売された漫画本『命がけの証言』(ワック刊)は初版8千部で、現在は7刷4万部まで増刷を重ねている。

 著者で漫画家の清水ともみ氏と同書で対談している静岡大の楊海英教授は、

「五輪組織委の森喜朗前会長の女性蔑視発言をあれほどバッシングしながら、多数のウイグル人女性が中国人にレイプされている事実に声を上げないのは大きな矛盾。こうしたダブルスタンダードに呆れる日本国民に、ウイグル人が命がけで真実を明らかにしようとした姿勢が響き、本が売れているのだと思います」

 政治部記者によれば、

「日本が、ウイグル人弾圧に毅然とした対応をとることはありませんでした。中国に太いパイプがある自民党の二階俊博幹事長や、中国と親しい公明党の議員がいますからね。ですが、永田町でも少しずつ潮目が変わってきています」

妊娠中絶にパイプカット

 この数年、中国は少なくとも100万人のウイグル族を収容施設に押し込め、暴力や拷問で政治的な洗脳を図り、北京語以外の使用を禁じたりしてきた。ウイグル族の出生率を下げるため、女性には不妊手術や妊娠中絶、男性にはパイプカットを強制している。“ウイグル人の根絶計画”だ。

 この現実について、「対中政策に関する国会議員連盟」の共同代表、中谷元・元防衛相に聞くと、

「世界的な平和国家を謳いながら、日本はたしかに異民族への弾圧やジェノサイド(民族大虐殺)を見て見ぬふりをしてきました」

 ならば、具体的にはどんな方策をとっていくのか。

「人権弾圧制裁法である『マグニツキー法』日本版の国会決議、または議員立法を目指しています。実現すれば、人権弾圧を行う国に対する入国拒否や資産凍結、テロリスト指定が可能になる。目下、アメリカやカナダ、EUが制裁に向けて動きはじめていますが、我々も6月のG7サミットまでに人権弾圧に対する動き方をまとめたい。G7の国でマグニツキー法を整備していないのは日本だけですから」

 国会でウイグル問題を取り上げている立憲民主党の松原仁代議士も、

「現在、政府レベルでウイグルへの弾圧をジェノサイド認定しているのはアメリカのみ。ほかにカナダとオランダは議会で決議し、イギリスも上院が可決しようとしている。こうした国際的な潮流を考えれば、日本もまずは国会でジェノサイド認定を決議し、政府を動かすことが大事です」

 ウイグル弾圧の非道は、来冬の北京五輪ボイコット運動にもつながっている。

「五輪に強い影響力を持つアメリカが、北京五輪に“参加未定”の立場を表明。カナダでは、下院が国際オリンピック委員会に中国以外での五輪開催を働きかけるよう政府に求める動議を採択しました。イギリス議会でも、代表チームの北京五輪への参加取りやめを求める声が上がっています」(政治部記者)

 日本でも『命がけの証言』のような声が広がれば、北京五輪ボイコットの動きが加速するかもしれない。

週刊新潮 2021年3月11日号掲載

ワイド特集「春の嵐」より