バイデンに脅されて韓国が選ぶ核武装中立 日本にも突き付けられる新たな踏み絵

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かっとなって中立化

――この寄稿は説得力を持ったでしょうか。

鈴置:読んだ人によります。筆者の狙い通りに「米国としっかりスクラムを組まないとまずいな」と考えた人も多いと思います。

 しかし、「韓国は米国にとって重要な国ではない」との指摘にかっとなって「じゃあ、いいよ。そんな同盟はやめる」と言い出す人もいるはずです。この寄稿の韓国語版の読者書き込み欄を見たら、やはり、そんなコメントが載っていました。ポイントを訳します。

・米国の第1の同盟国は欧州では英国、アジアでは日本だ。米国は韓国よりも日本を核心同盟国と見る。パク・テギュン教授によると、米国は韓国を中立化しようとした。現在、文在寅政権は米中間で綱渡り外交をしている。結局、中立姿勢である。米国は今の韓国に満足しているのでは?

 どうせ2線級の同盟国として扱われているのだ。米国から離れ中立国になろうじゃないか――との意見です。これに対する読者の「賛成」が3人、「反対」は4人でした。中立化を考える人がけっこういるのです。

「米国回帰」にはハードル

――でも、それは「かっとなって」の意見では?

鈴置:韓国では「かっとなって」物事が決まることが多いのです。それに「冷静になって」も、中立化を選ぶ人がいると思います。米国側に戻れば、いや、戻ろうとするだけで中国にイジメられるからです。米国への回帰は「言うは易く行うは難し」なのです。

 東亜日報の今年1月2日の社説の見出しは「『南北関係の修復より韓米同盟の強化が至急』という民意」(日本語版)でした。

 同紙が韓国人に「政権が至急すべきこと」を聞いたら「韓米同盟強化」が50・2%でトップ。「南北関係の修復」は17・5%に過ぎなかった、というのが論拠です。

 ただ、この世論調査によると「米中葛藤の中で韓国政府の採るべき道は?」との設問に対し、一番多かった答が「戦略的曖昧さを維持」(41・1%)、2番目が「韓米同盟を重視」(40・1%)、3番目が「中国との経済関係を重視」(11・7%)でした。

 バイデン政権下でもはや使えなくなった「戦略的曖昧さを維持」――米中二股外交に依然としてしがみつく韓国人が4割もいるのです。そのうえ「中国との経済関係を重視」する、親中派というべき人が1割いました。

 こうした「米国回帰」に踏み切れない韓国人を応援団に、文在寅政権は保守に対する反撃に出るでしょう。その際は「中立化」が有効なカードとなります。

 すでに着々と手を打っています。文在寅大統領は2020年9月23日に国連総会でリモート演説し、朝鮮戦争の終結を宣言しようと呼びかけました(「文在寅が国連で『同盟破棄』を匂わせ 激怒した米政府は『最後通牒』を突き付ける」参照)。

 終戦宣言を発すれば、北朝鮮を侵略者と見なして結成された在韓国連軍の存在意義が失われます。その主力は米軍です。米軍の撤収や米韓同盟解体に道を開きます。「中立化」です。

同盟の意義を疑う駐米大使

――国連軍の解体後も米韓同盟は残りませんか?

鈴置:文在寅大統領は演説で「多者的な安全保障体制が必要だ」とも述べました。韓国の左派は伝統的にOSCE(欧州安全保障協力機構)のような、敵対する勢力双方が参加する安保機構を結成し、米韓同盟に代えようと主張してきました。彼らが「多者的な安全保障体制」と言えば事実上、米韓同盟廃棄を意味するのです。

 この演説の少し前の9月2日には、統一部の李仁栄(イ・イニョン)長官が「韓米関係がある時点には軍事同盟と冷戦同盟を脱皮し、平和同盟に転換できると考える」と語りました(「文在寅が日米韓防衛会談を拒否、中国に忖度し堂々と米韓同盟を壊し始めた…」参照)。

 10月12日にはイ・スヒョク駐米大使が「韓国が70年前に米国を選んだからといって、今後70年間も米国を選択せねばならないというのか。国益に合致して初めて米国を選ぶということだろう」と語りました(「『核武装中立』に突っ走る文在寅、朝鮮戦争終結宣言で『米韓同盟』破棄へ」参照)。

 韓国国会の国政監査にリモートで参加しての発言ですが、現役の駐米大使が、米韓同盟が国益につながるとは限らない、と公開の席で言い切って同盟破棄を示唆したのです。

 大統領以下の一連の発言から、左派が米韓同盟を打ち切ろうとしているのは明らかです。ただ、D・トランプ(Donald Trump)政権の間は「今すぐに」というニュアンスではなかった。同政権は「中国をとるのか米国か」と韓国に厳しく迫らなかったからです。

 しかし、バイデン政権は完全に異なります。韓国に踏み絵を突き付けています。文在寅政権が任期中のどこかで、あるいは次期左派政権が本性をむき出しにする可能性が高まりました。

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