「5-ALA」は新型コロナに効果 “夢の新薬”誕生の可能性も

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重症者も改善

 5-ALAは厚生労働省の基準で、「食品」に分類されるサプリメントに過ぎないが、「治療薬」と認定されれば大きな効果が期待される。その作用メカニズムとは?

「現在の段階では、2つのシャーレの培養細胞にコロナウイルスを振りかけると、何もしない方はウイルスが増殖しますが、5-ALAを一緒に入れれば、増殖を完全に阻害することがわかっています。もちろん、人体に有効なのかが重要です。

 新型コロナを予防するという点では、5-ALAの産物であるプロトポルフィリンやヘムが、ウイルスのスパイクタンパク質(ウイルスにある突起物のような部分)に結合すると、ウイルスが受容体を認識できなくなり、細胞への侵入を防ぎます。予防内服により、新型コロナで大きな問題になっている、発症する数日前から周囲にウイルスをまき散らすことも抑えられると考えられます。

 マラリアでも見られるG4構造に、プロトポルフィリンやヘムが結合することはすでに知られていますが、5-ALAの産物のヘムなどが同じようにウイルスの遺伝子を複製したり、転写したりすることを阻害するので、患者に投与すれば “治療”になります。

 現在、25人ずつ5-ALAを摂取させるグループとそうではないグループに分け、臨床研究を行っています。対象は軽症と中等症の患者のみですが、実は重症患者にこそ投与したいと思っていました。しかし、ルールがあって難しい。それでも、医師の裁量で重症患者に投与して症状が改善された例もあり、すでに論文も投稿されています。これはヘムが過剰に合成されると分解酵素が産生され、抗炎症作用を誘導するため、免疫系の暴走であるサイトカインストームや肺の炎症を抑制するためと考えられます。

 さらに言えば、ミトコンドリアを活性化することでエネルギー代謝を活発にすることから、後遺症にも効果があります」

安全、安定、適切価格

 今、市中感染が広がっていると言われる変異種にも、「一部効きが悪くなる可能性もある」(北教授)とはいえ、効果を発揮する。体に対する高い安全性や経口で摂取できるという容易さに加え、5-ALAはほかにも利点がある。世界中で大量生産できるのは、静岡県にある「ネオファーマジャパン」の袋井工場だけだが、すでに多量の備蓄があり、安定供給が確保できるのだ。

「市販のサプリメントは、1カ月分で5000円ほどですが、ワクチンに比べ低価格で提供できます。人体への効果が認定され、アメリカやイギリス、ブラジル、メキシコといった大きな被害を受けている地域にも供給されることを願っています。加えて、室温で数年間も保存できるほど高い安定性があります」

 非の打ちどころがないように思えるが、配慮しなければならないのが、遺伝性の病であるポルフィリン症だ。日本人には症例が少ないが、もし今後治療薬として承認されれば、患者が多い欧米への供給に気を付けなければならないという。そしてもうひとつ。

「5-ALAが赤ワインや納豆に多く含まれる、と報じられたことから誤解もあるようですが、赤ワインや納豆は、ほかの食品よりも相対的に見て多く5-ALAを含んではいるものの、サプリメントで1日に摂取する15~25ミリグラムをワインで補おうとすれば、少なくとも9キログラム近くのワインを飲まないといけなくなってしまいます。特定の食べ物で感染を予防できるわけではないので、ご注意ください」

 ほとんどの医療従事者や研究者もこの結果を好意的に受け取り、なかには「なんでもっと早く臨床研究をしなかったのか」という声もあったという。

「これから治療薬として認められるため、科学的な検証をしっかり行って、成果を段階的にリリースしていきたいと思っています」

 新型コロナから人類を救う治療薬となるのかどうか。臨床研究の結果が待たれる。

デイリー新潮取材班

2021年2月22日掲載

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