「文在寅外し」に乗り出した米日 「中国べったり」と見切り、政権交代待ち

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「模範生」のブランドにしがみ付く

――「人権」や「法治」を韓国人に訴えて効き目があるのでしょうか?

鈴置:確かに、韓国人はそんな西欧的な価値にさほどの関心を寄せません。他人を攻撃する時には使いますが、自らを律する規範にはなっていません。

 ただ、韓国人も米国と価値観を共有するフリをすることで得てきた利益は守りたい。朝鮮戦争で多くの国から軍事的に助けて貰えたのも、戦後に膨大な援助を与えられたのも、「自由民主主義国」の看板を掲げていたからです。

 今、G7を拡大する構想が浮かんでいます。韓国がその看板を失えば、拡大メンバーに指名されるでしょうか?「慰安婦」を使っての日本非難に耳を傾ける人も減るでしょう。

 だから韓国人は保守も左派も「西側の模範生」というブランドを異様に大事にし、最大限に活用します。最近のハンギョレを見てもそれがよく分かります。日米首脳が電話協議を実施したのに韓国にはすぐには電話がかかって来なかった際に載った記事です。

真夜中に駆けつけた菅首相、米大統領との電話会談の“順序”が示す意味は?」(1月29日、日本語版)から引用します。

・新型コロナウイルスへの対応の成功などで最近、韓国の国際的地位が急激に上昇したことから、バイデン大統領が韓日首脳と少なくとも「同じ日」に電話会談を行うだろうとの予測が主流だった。米国にとって韓国は、自分たちが血を流して守り抜いた同盟国であり、民主主義と経済成長という二兎を得ることに成功した「模範生」だ。
・そのため、米国は韓米同盟に「要(linchpin)」という特別な用語を使う。韓国の国際的地位は最近さらに高まり、世界の主要民主主義国家の集まりである「D-10」に入る主要国家へと成長した。
・実際にバイデン大統領は、当選後の就任前には韓国、日本、オーストラリアなどインド太平洋地域の同盟国首脳と同日(2020年11月11日)に電話会談を行っている。日本とは電話会談を行ったのに、なぜバイデン大統領はまだ韓国とは行っていないのか、という不満が出る理由がここにある。

 この記事は「米国が血を流して守った韓国を大事にするはず」と書いた。まだ、「西側の模範生」というブランドが生きていると勘違いしているのです。米上院の外交委員長に就任するベテラン政治家が「血を流して守った韓国がこんな国になってしまった」と嘆いているというのに。

バイデンと手を組む韓国保守

――米韓首脳の電話協議の後、ハンギョレは「インド太平洋の欠落」に関し、どう説明したのでしょう。

鈴置:何と、電話協議を論じた社説「韓米首脳の初電話、『韓半島の平和』進展の出発点となるよう」(2月4日、韓国語版)では一切、「インド太平洋」に触れなかったのです。

 文在寅政権べったりの左派メディアとしては「米国から外された」と書いて、国民の反政府感情を呼び起こすわけにはいかない。

 それとは対照的に保守系紙は、ここを先途と「米国に見捨てられた!」と叫んでいる。2022年5月の大統領選挙で保守は苦戦が予想されています。国民的な人気を誇る候補者が見当たらないからです。

 こうなったらバイデン政権と組んで血路を開くほかない。「左派政権が続けば韓米同盟が消滅する」と国民に訴えれば、大物候補者がいない不利をある程度克服できるでしょう。韓国人は米国に反発することはありますが、多くはこの同盟を続けたいと願っています。

 冒頭で紹介した「インド太平洋の欠落」を指摘する前から、朝鮮日報は米上院議員のインタビューを載せたうえ、社説でも取り上げています。

 この社説「中共を称賛した文に対し『なぜ我々は共に血を流したのか』と問う米議員』」(2月4日、韓国語版)の書き方が面白い。メネンデス上院議員の発言を淡々と紹介しただけ。何の論評も加えず、「これ以上付け加える言葉はない」で結びました。

 普通の韓国人ならこれを読むだけで、十分に米国の怒りに気づきます。朝鮮日報の論説委員会は声を張り上げず、厳しい現実を突き付けることで韓国人をぞっとさせたのです。

 朝鮮日報や中央日報に遅れをとった感のあった東亜日報も2月6日、「文在寅とバイデンの亀裂」報道に加わりました。

<独自>米国防総省・国務省、鄭義溶の発言に反発 『(北朝鮮の核という)高級技術の拡散は重大脅威…合同訓練は“防衛的”』」(韓国語版)です。

 2月5日、外交部長官に指名された鄭義溶(チョン・ウィヨン)氏が国会の人事聴聞会で「北朝鮮には非核化の意思がある」と語ったうえ、米韓合同演習の実施に関し北朝鮮に配慮すべきだと示唆しました。

 東亜日報のワシントン特派員はさっそく国防総省と国務省に評価を聞き、外交部長官予定者の発言に対する否定的な見解を引きだしたのです。

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