「菅首相」は「官房機密費」をホントに総裁選に使っていないのか?

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“既得権益”と“身内への甘さ”

 週刊文春の取材で、菅義偉首相の長男が東北新社に“コネ入社”した可能性や、菅氏が大臣を経験した後も影響力を保持する総務省の担当として、長男が同省のキャリア官僚接待に精を出すさまが浮かび上がった。秋田のイチゴ農家の息子から徒手空拳で上京し、権力の階段を駆け上がった立身出世のストーリーは今や崩壊した格好だが、一方で菅氏の“既得権益”“身内への甘さ”を物語るのが、「官房機密費」問題である。

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 1月28日の参院予算委員会で、共産党の小池晃氏は、菅首相が官房長官だった第2次安倍政権下で官房機密費として約95億4000万円が支出されていたことを取り上げた。

 小池氏は、昨年9月の自民党総裁選のために支出したのではないかとただしたところ、首相は「そのようなことは一切ありません」と否定している。

 この質問は年明けすぐの赤旗の取材に拠るところが大きい。赤旗や共産党はかねて官房機密費の使途の明確化に熱心で、宮澤喜一内閣における加藤紘一官房長官(1991年11月~92年12月)が使った機密費の明細を手に入れて公表したこともあった。

《国会対策費》からは、英国屋などスーツの仕立券が与野党幹部に支出されており、《パーティー》の項目には政治家のパーティー券購入の実態が記述され、さらには、《長官地元入り経費》や《日比谷高校会費(加藤氏は日比谷高出身)》など、私的費用への流用も疑われた。

 明細に、「50万円の支払い先」として氏名のあった古賀誠元自民党幹事長は、受領を認める旨のコメントをしている。

 では今回の赤旗の記事(1月4日)の内容について、ざっと紹介しておこう。

1日で2億5000万円引き出した

・菅義偉首相が内閣官房長官に在任した7年8カ月余(2822日)で自身に支出した内閣官房機密費は86億8000万円超だった。

・支出した官房機密費の総額95億4200万円余の90・97%を菅氏は、自身の自由に使えるカネとして1日平均307万円を使ったことになる。

・昨年8月28日、安倍晋三首相(当時)の突然の辞任表明後に菅氏が総裁選への出馬を表明したのは、9月2日。その前日の1日に菅氏は、官邸内にある官房機密費1億3200万円余のうち、9020万円を菅氏自身が自由に使える領収書不要の「政策推進費」に振り分けた。

・官房機密費には「調査情報対策費」「活動関係費」「政策推進費」の3類型があり、このうち「調査情報対策費」と「活動関係費」は、事務補助者が出納管理をする。

・「政策推進費」に関しては、官房長官にカネが渡った時点で“支出完了”となり、何に使ったかを知るのは官房長官のみで、官房機密費の中でもっとも闇のカネの要素が強いカネ。

・菅氏は9月16日に官房機密費の引き継ぎを行ったが、その間で4820万円を使っていた。総裁選中もきっちり1日平均300万円を使った計算になる。

 官房機密費は内閣官房の仕事を円滑に進めるために機動的に使える経費とされ、月額は1億円前後で、これは2009~12年の民主党政権時代も同様だったから、菅氏が特別多く使ったというわけではない。

 ちなみにこの枠を大幅に超えて、「それまでの支出の態様とは異なるものと言わざるを得ない」と閣議決定された事案もある。

 政権交代が決まった衆院選直後の09年9月1日、麻生政権の河村建夫官房長官が2億5000万円の官房機密費を引き出したことがわかっている。

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