事件現場清掃人は見た 完璧な準備の末、妹に母親との無理心中をハガキで知らせた姉

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 誰にも看取られずに亡くなる“孤独死”は、年間3万2000人にも上るという。遺体は痛み、その影響で悲惨な状態になった部屋を原状回復させるのは、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。ベテランの特殊清掃人が、介護疲れで無理心中した悲惨な母娘のケースを回想する。

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 高江洲(たかえす)敦氏は、2002年から特殊清掃の仕事を始め、2010年に『事件現場清掃人が行く』(飛鳥新社)を出版、メディアで話題になった。昨年11月にも『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した業界のベテランだ。

「今回お話するケースの依頼人は、亡くなった女性の妹でした」

 と語るのは、高江洲氏。

「彼女に、姉からハガキが届いたのです。そこには、『このハガキが届く頃は、私と母はこの世に居ないでしょう』と書いてありました」

 驚いた妹は、急いで姉に電話。応答がなかったので、警察官と一緒に、東京郊外にある3DKのマンションに向かった。

母娘が並んで首を吊って

「母親と姉が亡くなっているのを発見しました。ぶら下り健康器に、母娘が並んで首を吊っていたのです。ハガキを出してすぐに自殺したようで、死後2日ほど経っていたそうです」

 なぜ、心中をしなければならなかったのか。

「母親は80代で、身体の自由がきかず、認知症も進んでいました。50代の姉は、母親を介護するため、数年前に仕事を辞めて、一緒に暮らしていたそうです」

 娘は母親を一人で介護していたが、身心ともに疲れ果て、心中を図ったという。

「母親が認知症だったこともあり、母娘でケンカが絶えなかったそうです。時には姉が母親を罵倒することもあったといいます」

 行政から介護認定などは受けず、姉が1人で母親の世話をしていたという。

「マンションは分譲ですから家賃はかかりません。ただ、遺品を整理していると、母親の年金以外、ほとんど収入がなかったことがわかりました。かなり苦しい生活だったようです」

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