ついにヒトラーと言われ始めた文在寅 内部対立激化で「文禄・慶長」が再現

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王宮を略奪・放火した朝鮮の民

――記事は「文禄・慶長の役」に言及しました。

鈴置:ええ、チョン・ヨンギ氏は「文禄・慶長の役の時のように政権は国民に見捨てられるぞ」と述べました。それ以上は言及していませんが、以下の史実を念頭に置いて語っていると思います。

・日本軍の侵攻当初、朝鮮の普通の人々はそれを見守るだけだった。それどころか王が逃げ出した王宮を略奪、放火するなど日ごろのうっぷんを晴らした。派閥争いに血道をあげ、民の安寧を顧みない指導層に多くの国民が愛想を尽かしていたからだ。

――なるほど!当時と似てきましたね。でも今回は、日本が攻めて行くわけでもない。

鈴置:軍事的に攻める時代ではありませんが、外交的には今が「攻め時」なのです。例えば、韓国政府が駐日大使に内定した姜昌一(カン・チャンイル)氏の問題。

 産経新聞は社説「韓国次期駐日大使 改善にふさわしい人物か」(12月12日)で「『日王』と天皇陛下を格下げして呼ぶ人物は日韓関係の改善に寄与しない」と主張しました。

 日本政府が姜昌一氏の駐日大使就任にアグレマン(同意)を出さなくても、韓国政府は反撃しにくい状況です。韓国の保守系紙もこの人事に疑問を呈することで、政権批判に拍車をかけているからです。(「韓国は『アグレマン』前に駐日大使を発表した 『北朝鮮一点買い』で延命図る文在寅」参照)。

 それに2019年、米政府も駐米大使に内定した文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官へのアグレマンを拒否しています。理由は明かしていませんが、文正仁氏の反米的な姿勢を嫌ったと見られています。韓国の孤立を物語る事件でした。

ベネズエラにも似てきた

――では、日本はアグレマンを出さない?

鈴置:日本はカンが鈍い国になりましたから、この「チャンス」を見逃す可能性が高い。でも、中国や米国は韓国の内紛につけ込んで自分の勢力を拡大しようとするはずです。

 韓国との同盟に重きを置かないトランプ(Donald Trump)政権から一転、バイデン(Joe Biden)次期政権は同盟国重視の姿勢に転換します。韓国への「介入」が本格化するのは間違いありません。

 激しい左右対立で混乱するベネズエラには今、米中両国が介入しています。チョン・ヨンギ氏が記事の中で、文在寅大統領をヒトラーに加え、チャベス氏らベネズエラの左翼政権のリーダーに例えているのが何やら象徴的なのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年12月21日掲載

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