ついにヒトラーと言われ始めた文在寅 内部対立激化で「文禄・慶長」が再現

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文在寅の危険性をただ1人指摘

 その頃の韓国紙の記者には「我が国はこのままではだめになる」との痛切な思いがあった。その思いと権力と向き合う気合いを傍で見て、自然と頭が下がったものです。

 当時の韓国記者が今の、ネットでの読者数を稼ぐために政府から配られるネタを適当に書き散らす記者を見たら、どう思うのだろうかと時々、考えます。

 チョン・ヨンギ氏は文在寅氏の危険さをいち早く指摘した記者です。2017年の大統領選挙戦の最中、「米国が北朝鮮を先制攻撃する際、どう対応するか」と聞かれた文在寅氏は、北朝鮮にそれを知らせる、と答えました。

 この発言を批判的に報じた韓国メディアがほぼ、皆無だったことには驚かされました。その中で、チョン・ヨンギ氏だけが「米国にとって韓国は戦争の機密を敵国に渡す国になる」と指摘しました(『米韓同盟消滅』第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。

政府系紙も「中立性毀損」に言及

――今の韓国も「このままではいけない」のですか?

鈴置:チョン・ヨンギ氏が記事の冒頭で書いたように「無法国家に転落した」のです。検事総長への懲戒処分は「無法」と批判されても弁解できません。

 秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官は11月24日、メディアとの癒着や政界への転身希望表明などを理由に、尹錫悦総長に職務停止処分を下したうえ、同氏への懲戒を請求すると発表しました。これに対し尹錫悦総長は裁判所に職務停止処分の執行停止を申請しました。
 
 法務部の監査委員会も裁判所も職務停止処分を認めませんでした。前者は手続き上の瑕疵、後者は「尹錫悦総長の勝訴の場合にも、職務停止による損害を回復できない」との理由からです。その後、法務部の懲戒委員会が2か月の停職という懲戒処分を下したのです。

 政府系紙、ハンギョレは社説「初の検察総長懲戒、大統領が率直な説明を」(12月17日、日本語版)で、今回の懲戒委員会の停職処分を「検察に対する民主的統制」と評価しました。

 それでも「検察の中立性の毀損という一部の懸念に大統領は答えよ」と書かざるを得ませんでした。政府系紙とはいえ、「法治の破壊」との批判を無視できなかったのです。

「無法」国家になれば、ただでさえ激しい左右の対立に歯止めが効かなくなります。デイリー新潮の「『公捜処』という秘密兵器で身を守る文在寅 法治破壊の韓国は李朝以来の党争に」でも指摘したように、指導層の内部抗争で滅んだ李朝の再現です。

握りつぶされるコップ

――チョン・ヨンギ氏の警告は韓国人の耳に届くでしょうか?

鈴置:届かないと思います。世論調査機関、リアルメーターが12月16日、今回の懲戒に関する評価を聞きました。「重すぎる」と答えた人が49・8%、「軽すぎる」が34・0%、「適切だ」が6・9%でした。

 「軽すぎる」と「適切」を足すと40・9%。「重すぎる」の49・8%とさほど変わらない。左派の人々には「民衆を弾圧してきた検察のトップ」への懲罰は痛快な出来事と映っているのです。

 保守系紙が「法治が崩壊する」と警鐘を鳴らしても、左派の耳には「保守の悲鳴」としか聞こえない。そこでチョン・ヨンギ氏は先に引用したように、政権が支持を失い国民が離反すれば外国の侵略に耐えられなくなる、との論理で説得を試みたと思われます。

 「コップの中の嵐」をやっていると、外の大きな手でコップごと握りつぶされるぞ、との警告です。左右対立で周りが見えなくなっている韓国人の目を覚まそうとしたのでしょう。

 韓国は今、国際的に孤立しました(「蚊帳の外から文在寅が菅首相に揉み手 バイデン登場で“不実外交”のツケを払うはめに」参照)。

 そのうえ、内輪もめに明け暮れれば、周辺国から手を突っ込まれ、国の自主性を保てなくなります。

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