草津町長からの性被害を訴えた女性町議が住民投票で失職 欧米メディアの報じ方は?

国内 社会

  • ブックマーク

女性は従順であるべき

 朝日新聞の報道から、黒岩町長の「投票結果によって街の尊厳が守られた」との発言を紹介する一方、女性法学者の以下のような指摘を掲載した。

 日本のメディアは「ジェンダーに基づく暴力」――性的暴力やセクシャルハラスメントなど――の報道が欠如しており、女性は従順であるべきという“広範な文化的態度”が存在する。

 そのため、草津町のような小さな自治体では、女性は命令に従うべきだと今でも信じている。新井氏の失職は、日本に多くの女性議員が必要であることを浮き彫りにしており、女性議員が多かったなら住民投票の結果も変わったかもしれない。

 末尾では、東京地裁が19年12月、ジャーナリストの伊藤詩織氏が性的暴行を受けたとして、元TBS記者の山口敬之氏に330万円を支払うよう命じた判決を紹介した。

 イギリスの大手高級紙ガーディアン(電子版)は12月8日、「町長による性被害を告発すると、町で1人の女性議員が追放された」との記事を配信した。

 見出しの下にはリードのような文章が掲載されており、ここには《町長に楯突く主張を行うと、町民は町の評判を傷つけたとし、新井祥子は住民投票で失職された》とある。

新井氏も会見

 ニューヨーク・タイムズと同じように、ガーディアンも冒頭部で新井氏に対するリコール運動を振り返っている。

 その中で目を引くのは、新井氏の敗北の理由として、日本における「#MeToo運動の後退」が挙げられていることだ。

 ガーディアン紙は失職となった新井氏を《plight》と形容。これは「苦境」や「窮状」、「窮地」といった意味だ。そして《日本の国政や地方政治における男性支配を浮き彫りにした》と総括した。

 やはり伊藤さんの判決を紹介。日本で性的暴行を訴え出た被害者は僅か4%にしか過ぎないことも伝え、リコール運動より性暴力の疑惑を適切に調査することが必要だとした。

 イギリスのオンライン新聞インディペンデントは12月8日、「日本の女性町議が町長による性被害を告発すると、投票で町議会を除籍された」と報じた。

 この記事も経緯を振り返る際、新井氏が性的被害を主張すると、《議会の男性メンバーの間で怒りの反発を引き起こし、その後、彼女に対する一連の個人的な攻撃が続いた》と記述した。

 記事はG7諸国の中で、日本は女性の政財界への進出が最下位だと指摘。日本の当局は性被害の刑事事件化に慎重すぎるため、日本国内で#MeToo運動が高揚することの妨げになっていると結論づけている。

 アメリカの人気ネットメディアのニューザーも12月9日、「彼女が町長による性被害を告発すると、全ての罰を受けた」という見出しで報じた。

 12月18日には、同じ外国人記者クラブで新井氏の会見も開かれるという。

週刊新潮WEB取材班

2020年12月18日掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。