「公捜処」という秘密兵器で身を守る文在寅 法治破壊の韓国は李朝以来の党争に

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2020年12月14日掲載

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 これまでも怪しげだった韓国の法治。文在寅(ムン・ジェイン)政権が本格的に壊し始めた。韓国観察者の鈴置高史氏が解説する。

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野党の拒否権をはく奪

鈴置:「政府高官の不正を見逃さない」をうたい文句に、強力な捜査機関が韓国で近く発足します。大統領の直轄組織で、韓国語の正式名称は「高位公職者犯罪捜査処」。略称は「公捜処」です。

 独占的な力を誇ってきた検察権力を解体する政策の一環として設立します。が、保守派は左派の新たな権力装置になるとして「文在寅のゲシュタポ」と呼んでいます。

 公捜処は大統領や首相を含む上級の国家公務員、国会議員、将官級以上の軍人、地方自治体の首長と、それらの家族に対する捜査権を持ちます。さらに長官、裁判官、検事、警察の上級職員と、家族に対しては捜査権に加え、起訴権も持ちます。

 公捜処の設置法は2019年12月30日、左派の与党「共に民主党」による強行採決により国会を通りました。ところが、保守の野党第1党「国民の力」の抵抗で公捜処のトップである「処長」を決められず、組織も動き出せないでいました。

 処長を決める推薦委員会は、野党が推す2人を含む7人の委員で構成します。ただ、「6人以上の同意が必要」と設置法は定めていたので、野党が「拒否権」を発動したのです。

 そこで与党は「5人の同意があれば良い」とする改定案を提出したうえ12月10日に強行採決、可決しました。近く与党の推す候補者が処長に決まり、公捜処は年明けにも正式発足の見込みです。

 公捜処の検事は文在寅政権の息のかかった左派の弁護士らで占められると見られています。検事らの任期は9年間。仮に、2022年の大統領選挙で保守が政権を奪還しても2030年までは「左派の公捜処」が続きます。

保守が弾圧される番

――野党の反対は執拗だった……。

鈴置:当然です。公捜処の権限は極めて強大です。保守の政治家を乱訴するなど弾圧が容易になります。大統領選挙直前に保守の候補者を訴えるといった手口を使えば、左派の政権独占に道が開きます。

 軍事独裁と非難された1987年までの強権的な政権の時代には、検察や裁判所は手下となって野党や民主化運動を弾圧しました。もちろん選挙でも野党は不利な立場に置かれました。韓国の保守は、今度は自分たちがやられる番だ、と青ざめているわけです。

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