渡辺直美、壮絶な生い立ちから「吉本の宝」へ ノブコブ徳井が明かす天才の素顔

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 平成ノブシコブシ徳井健太がお笑いについて熱く考察する『敗北からの芸人論』が2月28日に発売されます。

 今回はその中の一編「壮絶な生い立ちから「吉本の宝」へ――渡辺直美」をお届けいたします。

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理屈を超えた新世代

 渡辺直美というバケモノが後輩にいる。

 口パクでビヨンセのモノマネをするという規格外のネタ。いや、ネタなのかどうかすら分からない。2008年、当時の僕は本物のビヨンセを知らなかったが、直美のビヨンセを初めて見た時の衝撃は未だに忘れられない。

 後にビヨンセ本人の映像を見たが、全然似ていなかった。けれど、それでもやっぱり直美のネタは見る度に笑う。笑わずにはいられない。

 超ド級のパワーを放つ、理屈を超えた新世代の登場。

 どこかに既視感を覚えながらも、渡辺直美の最初の印象はそれだった。

台湾人の母が離婚、極貧生活へ

 直美の母親は台湾人で直美も台湾で生まれた。その後日本で暮らしていたものの、母は日本人の父と離婚。父親は行方知らずで食うに困るほど貧乏な幼少期を送る。その上、母親が日本語を話せなかったため、直美もずっと日本語が上手く使えなかった。勉強も苦手で中卒、アルバイトでお金を貯めながら芸人を目指した……。そんな世間一般で考えると少しパンチの利いた家庭環境も、芸人界隈ではよくあることだ。

 不幸自慢をするわけではないが、僕の人生もなかなかやばいし、僕は人間としても結構腐っていた。今でこそこうやってまともなフリをしているが、少し前まではいつ犯罪者になってもおかしくないくらい倫理観も犠牲心も公共心もなかった。

 そんな僕みたいなクズ人間が、芸人の世界には沢山いる。親がいないくらいは当たり前だし、虐待やいじめを受けて偏屈になっている人も珍しくない。国籍も多種多様だし、たまーに犯罪歴のある人だっている。

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