浮気した妻が「DVをでっちあげ」 子供を奪われた男性が語る「日本のおかしな現実」

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「Papa this is fun!」 連れ去り1週間前に子供たちが残した肉声

 連れ去りから1ヶ月ほど経過し、弁護士を通して面会調停を申し入れた。だが妻は拒否してきた。

「子供たちが『パパ嫌い、会いたくない』と言っていると。これまで3回、調査員調査が入りましたが、最後の調査では息子が『パパを刑務所に入れてください』と言っているという。ありえない! ウソに決まっている! それが事実だとしても、誰かが子供たちにそう仕向けているとしか考えられない。これを見てください」

 そう言ってスコットは、ノートパソコンを開いて指し示した。

 そこには、彼が撮り続けてきた子供たちの笑顔が溢れかえっていた。砂浜で飛び跳ねてはしゃぐ二人。クリスマスパーティでケーキの前でサンタクロースに扮する二人。公園、レストラン、旅先……。四季折々の景色の中で、屈託のない笑みを浮かべる子供たちの姿があった。

 時々、自撮りするスコットも写り込む。二人の子供は奪い合うようにパパの顔に頬を寄せ合っていた。連れ去りの1週間前に公園で撮られたという動画には、子供たちの肉声も残っていた。

「Papa this is fun!」「Papa thank you!」

あの子たちの父親はこの世に一人しかいない

 スコットは家庭裁判所に対する憤りを隠さない。

「家裁の調査員による子供たちへの調査報告書を読むと、『子供たちは用意してきた紙を読み上げて答えた』と書いてある。そんなことを7歳の子供が自発的にできますか。誰かがそう言わせている、と考えた方が自然じゃないですか。母国ではこのような調査には大学で心理学を専攻したプロフェッショナルが担当します。そして、『片親疎外』が起きていないかをしっかり見極めます」

 片親疎外とは、同居親が子供に不適切な言動などを取ることで、別居親との関係が破壊されることをいう。そもそも、オーストラリアを始めとして「共同親権」制度が敷かれた国では、面会調停など行われないのが一般的だという。

「平日は母親と、休日は父親となどと分けて過ごしたりします。刑務所にいる父親を子供が訪ねて面会したりするくらいです。夫婦が壊れたことと子供は関係ない。子供には父親も母親も必要でしょう。父母が別れようとも、子供たちの父親はこの世にたった一人しか存在しないのです」

子供たちを探しに行ったら不法侵入で逮捕された

 スコットは目の前で起きていることを受け入れられなかった。ここはG7にも加わる先進国である。こんな不条理、不正義がまかり通るわけがない。だから彼は、毎日のように警察に通い続けた。いつかは自分の声が彼らに届き、突破口が開けると信じて。

「40回は行ったと思いますが、警察官は私の顔を見るなり厄介払いするようになりました。ガイジン帰れ、みたいな態度でした」

 それどころか、彼は同じ警察署に逮捕されてしまうのである。

 昨年10月、東北地方に甚大な被害をもたらした台風19号が吹き荒れた日のことだった。子供たちの身が心配になったスコットはいてもたってもいられなくなり、祖父母のマンションを訪ねた。

「電話番号を変えた妻とは、連絡が取れなくなっていました。メールも50通以上送っていましたが、返事は1回もない。もう義父母のところに行くしかないと考え押しかけたのです。朝から晩まで何十回とインターフォンを鳴らし続けました。そして、今日こそ決着をつけようと、住人が出入りした隙にエントランスの中に入り、ソファーに座って祖父母が出てくるのを待ち続けた。結局、義父母には会えませんでした」

 だが、妻側が通報したことで警察が動き、スコットは1ヶ月後、住居侵入罪で高井戸署に逮捕された。

「それから45日間、高井戸署の留置所と小菅の東京拘置所に勾留されました。房は24時間灯りがついていて、まったく眠れませんでした。ふつふつと怒りが湧いてきます。なんで子供を探しに行っただけで、こんな目にあわなければならないのだろうと。房では8人くらいの容疑者と過ごすのですが、ヤクザや凶悪犯もいました。彼らに逮捕された理由について話すと、同情されました」

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