大型補強も結局、下位低迷…「楽天イーグルス」はなぜ強くならないのか?

スポーツ 野球 2020年11月11日掲載

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 今年のパ・リーグで本命のソフトバンクに次いで、前評判が高かったのが楽天だ。オフには鈴木大地、涌井秀章、牧田和久、ロメロと実績のある選手を次々と獲得。ソフトバンクには及ばないまでも、昨シーズンの3位以上の成績を狙えるという声は多かった。シーズン序盤はその期待通りにソフトバンクと首位争いを展開して、2013年以来のリーグ優勝への期待も高まっていた。ところが8月下旬から徐々に成績が下降して優勝戦線から脱落。10月以降は借金生活に入り、昨年を下回る4位でシーズンを終えた。

 このような結果を受けて衝撃的なニュースが飛び込んできた。結果を残した平石洋介前監督を退任させてまで就任させた三木肇監督を今季限りで交代する方向で調整しているというのだ。まだ、正式決定ではないものの、このような報道が出るという時点で球団内部が揺れていることは間違いない。

 プロ野球参入9年目の2013年には見事にリーグ優勝、日本一に輝いている楽天だが、これまでも決して順風満帆だったわけではなく、むしろ球団内部の揉め事は多い印象が強い。初代監督の田尾安志と2015年に監督を務めた大久保博元はYouTubeで球団に対する不満を公言している。このような例は、他の球団ではなかなか見られないことだ。

 まず、気になるのが監督人事についてだ。初代の田尾から今年の三木までこれまで8人が監督を務めているが、複数年にわたって指揮を執ったのは野村克也、星野仙一、梨田昌孝だけである。

 この3人はいずれも他球団で優勝経験があり、簡単に解任できないので複数年任せたが、そうでない監督については“使い捨て”という見え方すらしてくる。今年についても実績のない三木を抜擢するのであれば、数年かけてチームとともに監督としても成長を促すというのが一般的な考え方であり、今年が勝負というのであれば、もっと実績のある監督を招聘すべきだろう。そのあたりにちぐはぐさを感じずにはいられない。

 問題があるのは監督人事だけではない。選手のスカウティング、育成についても決して上手くいっているとは言えないのが現状である。2004年からドラフト会議に参加しているが、これまでの1位指名で本当の意味で成功しているのは田中将大と松井裕樹の二人だけである。

「統一ドラフト」となった2008年以降の1位、2位の上位指名で見ると、松井以外では、完全な主力として定着したのは、美馬学(現ロッテ)と則本昂大ぐらいしか見当たらず、3位以下でも島内宏明と茂木栄五郎が目立つ程度である。投手では、田中、則本という球界を代表するエース格を輩出しているが、野手についてはまだそのような存在は一人も出ていない。生え抜き野手のシーズン最多本塁打が、田中和基が2018年に記録した18本ということが、その深刻さを物語っていると言えるだろう。

 現在のチームを見ても、打線を牽引しているのはFAで加入した浅村栄斗、鈴木大地と外国人のロメロだ。島内やルーキーの小深田大地が結果を残しているとは言っても、“外様”の選手がいなければ得点力はリーグでも最低クラスになることは間違いない。投手陣に関しても則本以降はエースになれる存在が育っていないのは問題である。

 そして、何よりも大きな問題は、チームとしての中長期的なビジョンが見えないというところ。星野仙一を監督として迎えて結果は出たものの、2013年の日本一は田中という大エースへの依存度が大きく再現性には乏しい。石井一久をGMとして迎えて、その人脈から他球団の主力を獲得することには成功しているものの、内野手は飽和状態で外野手も似たタイプの選手が多く、戦力が上手く整備されているとは言い難い。数年後に誰が主力となって、どのような戦い方を目指しているのかは依然として不透明なままである。

 救いは今年のドラフトで投手では一番人気である早川隆久(早大)を引き当てたことだが、早川が田中のような存在に成長しなければ、優勝はなかなか見えてこない。三軍まで多くの戦力を抱えて育成からも選手を輩出しているソフトバンク、スケールの大きい選手をドラフトで獲得して抜擢しているロッテに比べると、戦力も戦略も不足していることは否定できない事実である。楽天のフロントは、監督を頻繁に交代させる前にやるべきことは多いはずだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集