「カツカレーまん」は日本料理で大騒動……英「料理番組」で分かった日本食の認知度

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なぜ番組はミスを犯したか?

 記事タイトルを見れば、なぜ出演者が「カツカレーまん」を作ったのかが見えてくる。中華まんという課題を日本料理と思ったかどうかは分からないが、イギリスで人気の“和食”の1つがカツカレーであるのは事実だ。

 興味深いのは、原文の料理名だ。「DAVE’S CHICKEN SHAPED KATSU CURRY BUNS」と、カツは《KATSU》と日本語が使われている。

 きっと出演者は、中華まんにカツカレーを組みあわせることで、「日本料理」を表現できると思ったのだろう。

 また「チキン」が登場するのは、イギリスでカツカレーはチキンカツが主流であることを反映しているのかもしれない。イスラム系移民にとって豚肉は宗教的な禁忌であり、カリブ海系の移民は鶏肉を好むためだ。

 更に出演者は、中華まんに鳥の顔を模すことによって、いわゆる“キャラ弁”的な演出を施したのではないか。

 出演者の勘違いは仕方ないにしても、なぜ番組側も中華料理と日本料理を混同したのだろうか。「ベイクオフ」がイギリス人にとって正真正銘の異文化である料理を取り上げたのは「日本」が初めてのようだ。木村氏は「そのこと自体は嬉しいことです」と評価する。

イギリスとフランスの“差”

「番組が『リサーチ不足』と批判されるのはやむを得ません。『KAWAIIケーキ』の課題も、いつものルールとは違ってしまいますが、特例としてイメージ写真を示してもよかったのかもしれません。しかしながら、この回はイギリスにおける日本のポジションをリアルに示したという点で、非常に興味深いものがあったと考えています」(同・木村氏)

 そもそもイギリス人の国民性も大いに関係があるという。近年、イギリスでは食に対する関心が高まっているが、それでも美食を追求するというレベルにまでは至っていない。

「世界的な和食ブームと言われますが、少なくともヨーロッパでブームを牽引しているのはフランスです。一般的なフランス人は和食の知識をかなり持っており、さすが美食の国だと思わされます。それに比べると、イギリス人の知識や関心はまだまだでしょう」(同)

 更にイギリスでは年々、中国と韓国の存在感が高まる一方、日本は地盤沈下気味だという。それは「食文化」という面でも変わらない。

「イギリスに住む中国人は増加傾向にあり、それと共に文化面での発信力も強まっています。韓国も昨年8月にイギリスと『韓英自由貿易協定(韓英FTA)』を結びました。その結果、スーパーで韓国の食材を見ることも増えてきました」(同)

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