飛び降り自殺の巻き添えで亡くなった女子大生 遺族は損害賠償を請求できるか

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心神喪失状態なら親に監督責任

「高校生の知能が低く、飛び降りで賠償責任が発生すると理解できないような場合には、本人には賠償責任はなく、代わりに親の監督責任が問われます。親への賠償請求が可能になるわけです」

 自殺した高校生は、大阪府立高校に通っていた。とても知能に問題があったとは思えない。

「あとは、高校生の精神状態ですね。精神的に問題があって、善悪の判断がつかないなど、心神喪失状態であったなら……。あるいは、精神を患っていて、精神病院に通っていれば、親の監督責任を問うことも可能です」

 その場合、高校生の精神状態をどうやって把握するのか。

「巻き添えで亡くなった方の遺族が、高校生の精神状態を把握するのは容易なことではありません。警察は、高校生を刑事事件として捜査しますが、容疑者が亡くなっているので、捜査も簡易なものになりますね。高校生の親からは事情を聴くでしょうが、結局、容疑者死亡のまま重過失致死容疑で書類送検して終わりでしょう」

 お手上げなのだろうか。

「3カ月はあっという間に過ぎますから、それまで高校生の親には接触せず、3カ月後に民事裁判の手続きを行う、という方法もあります。もっとも、高校生の親族がネットなどで3カ月以内に相続放棄すれば……という情報を知っていれば、なすすべもありませんが……」

 賠償額はかなり低くなるが、ビルのオーナーや管理会社を訴えることも可能という。

「高校生が屋上へ出る際、ドアの鍵を覆っていたプラスチック製カバーを壊しています。ドアが開いた時、警備室のブザーが鳴ったわけですから、自殺志願者が屋上に出ることを想定しています。結局、ブザーが鳴っても自殺を防げなかったわけですから、簡単に壊せるプラスチック製カバーではなく、頑丈な鍵をつけるべきだったとして、管理義務違反を追及することは可能です」

週刊新潮WEB取材班

2020年10月30日掲載

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