柔道大会中止で“ホッとした” 山下JOC会長の言葉のウラとは

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 国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会と東京五輪組織委員会の会合が行われ、IOCのバッハ会長が来年の東京五輪について「必ず実現できる」と前向きな姿勢を示した。

 何やら風向きが変わってきたようだ。スポーツ紙五輪担当記者によると、

「テニスの全米オープンや自転車競技のツールドフランスなど大規模国際大会が無観客ながらも開催され、観客を入れた試合もサッカーや野球などで始まった。“五輪も何とかやれるのでは”という気運が世界的に高まりつつあります」

 ところが、そんな気運と裏腹に、12月に予定されていた柔道の「グランドスラム(GS)東京」は中止が決まったのである。

「GS東京が開催できれば、これを足掛かりに他競技でも国際大会を行う算段になっていたんです。なので、中止の決定は柔道界のみならずスポーツ界全体を落胆させました」(同)

 これを受けて9月24日、日本オリンピック委員会(JOC)会長にして全日本柔道連盟会長である山下泰裕氏(63)が囲み取材に応じたのだが、記者に中止の感想を聞かれた氏が発した言葉は意外なものだった。

「何と“ホッとした”“気が楽になった”と宣うた。耳を疑いましたよ」(同)

 厳密に言うと、ビゼール国際柔道連盟会長から大会中止を聞かされた際の心境を山下氏はこう述べた。

「最初はショック、残念。でも電話を切って2、3分したらホッとした」

 テニスや自転車と違って、柔道は“密”が不可避のコンタクトスポーツ。そう簡単に再開できないのはわかる。しかし、柔道以上に“密”である大相撲が興行に及んでいるのもまた事実。徹底した防疫措置を講ずれば開催も不可能ではあるまい。そして、山下氏が最後の最後まで諦めずに開催に尽力していたのなら、決して“ホッとした”などという言葉は出て来ないはずだ。それとも、万が一、クラスターが発生したりして、自身の責任問題に発展することを恐れていたのか。

「実は、山下さんの背後に控える森喜朗組織委員会会長が、GS開催に慎重論を唱えていたのです」

 と先の記者が種を明かす。

 森氏といえば9月28日、“どんなことがあっても来年は(五輪を)必ずやる”と宣言。GSを決行すれば、五輪の予行演習になるし、自ずと五輪への気運は高まるわけだから、むしろ諸手を挙げて賛成しそうなものだが、

「年末に数カ国で行う予定の体操の大会はゴーサインが出ていますが、約80カ国が参加するGSはリスクが高すぎる。クラスターが起きたら、五輪には致命的なダメージになります」(同)

 なるほど、山下氏がどちらを向いてホッとしたのか、がわかる話である。

週刊新潮 2020年10月8日号掲載

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